編集長が代わります!登山を楽しむ人のためにYAMA HACKがやっていくことって?

2020/01/03 更新

2020年1月でYAMA HACKの編集長が2代目を務めた青柳から大迫に代わります。この機会に普段はあまり語ることのない「YAMA HACKを運営する想い」や「やっていきたいこと」をいつもよりも真面目に話し合ってみました。いつもコンテンツを楽しみにしてくれている皆さんに、少しでも想いが届くと幸いです。


アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

「これからの登山」について語ってみました

YAMA HACK
撮影:YAMA HACK編集部
2015年8月に誕生した登山WebマガジンYAMA HACK。2017年の夏から2代目の編集長を務めてきた青柳が、2020年1月1日をもって編集長を大迫に交代。

そこで今回は、これまでのコンテンツとは趣向を変え、新旧編集長が「これまでとこれからの登山」について、いつもよりちょっぴり真面目に語り合います。

まずは簡単に自己紹介

YAMA HACK編集部
撮影:YAMA HACK編集部(左:大迫、右:青柳)
《2代目編集長 青柳》2017年6月よりYAMA HACK編集部に
高校山岳部で登山を始めて19年。大学ではワンダーフォーゲル部に所属し、日本アルプスや九州の山を縦走。『山と高原地図』を見ながら縦走ルートを考えるのが好き。
《3代目編集長 大迫》2018年2月よりYAMA HACK編集部に
オーストラリアを徒歩で旅をする。帰国後、地元の六甲山山頂で飲んだ三ツ矢サイダーの味に感動し、山登り始めて9年。関西や中四国の山を中心に、季節を変えて同じ山に通い詰める派。

登山メディアを通して伝えたかったことって?

YAMA HACK編集部
撮影:YAMA HACK編集部(左:大迫、右:青柳)
「登山を楽しむ人を増やしたい」「たくさんの人に山の素晴らしさを知ってほしい」という想いで運営しているYAMA HACK。
まずは青柳が2年半の間に、登山メディアYAMA HACKを通じて伝えたかったことを2つ紹介します。1つは、登山を始めるきっかけの多様化。もう1つは、未だに減らない遭難者についてです。

登山を始めるきっかけの多様化とそこに潜む課題

YAMA HACK
撮影:YAMA HACK編集部
日本百名山をはじめとして山を“制覇”する人が特に多かった頃に比べると、最近では登山人口こそ増えてはいないものの、山の楽しみ方や始めるきっかけが増えてきました。
ガレージブランドやウルトラライト、山ごはん、ワークマンなど登山者を取り巻くキーワードは変わりつつあると言えます。
編集部 大迫
SNSやインターネットのおかげで、誰でも簡単に山の景色や情報を見られるようになりました。

山の魅力を多くの人が知れるようになったことは素直に良いことだと思いますが、最近の登山についてどう思います?

編集部青柳
楽しみ方やきっかけが多様化したよね。インスタグラムで行きたい山を見つけたり、「山」だけでなく「山小屋」に行くのが目的だったり。情報が豊富になり誰でも気軽に登山を始められるようになったと思います。

ただ、一方で専門的な知識を身につけていない人でも、十分な知識がないまま気軽に山に来れてしまうようになった。

編集部 大迫
僕も登山を始めた頃には、専門的な知識を身につけようという発想はありませんでした。

周りに登山をやっている人もいなかったですし、知識や情報は本やネットで収集してましたね。

編集部青柳
昔なら山岳会とかがそういう場だったんだけどね。ただ、いろんなきっかけで山に登る人が増えているからこそ、登山者の知識や技術のベースが落ちてくる気がしてて・・・。

だから、どんなきっかけで登山に興味を持っても、必要な情報が無料で手に入る状態にし、登山者の知識のベースアップを図りたいと思っているんです。

あらゆる人を受け入れてくれる山だからこそ、全ての人に安全に登山を楽しんで欲しい。

編集部 大迫
いろんな山の楽しみ方の発見と正しい情報発信ですね。

山岳会の技術継承など良い伝統は残しつつ、今の時代の登山に合う方法も探し続けないと思います。

編集部青柳
正直まだまだできていないことも多いけど、過去の記事とも向き合いつつ、日々のコンテンツの中から小さな発見や楽しみを見出して欲しいと思いながら編集長として運営してました。

いまだに道迷い遭難者が年間1,000人以上いて、行方不明者がでる異常さ

遭難者数
作成:YAMA HACK編集部(参考:警察庁 平成30年における山岳遭難の概況
登山人口は停滞気味にも関わらず、遭難者数は長年増加傾向に。単純に遭難者が増えているのか、スマホの普及・基地局の増加による通報のしやすさからこれまで見えてこなかった“小さな遭難”が明るみになってきたのか、さまざまな見解がありますが、遭難者の約10%が山で亡くなっているという悲しい現状があります。
編集部 大迫
YAMA HACKとして、安全登山に関する情報発信に力を入れ始めたのは2018年春頃。それまでも記事はありましたが、注力するようになったきっかけって?

編集部青柳
2018年のゴールデンウィーク明け、新潟県の五頭連山で父子が道迷いの後に遭難死したニュースがきっかけです。

年が近く小さい子を持つ親として、あのニュースにはとても胸を締め付けられました。

平成30年度遭難者態様別
作成:YAMA HACK編集部(参考:警察庁 平成30年における山岳遭難の概況
編集部 大迫
道迷うと思って登山をする人は、ほとんどいないですよね。遭難者の約40%は道迷い遭難がを占めてて、死者もゼロではないんですよね。

どうすれば、道迷いや行方不明を減らせると思いますか。

編集部青柳
すごく簡単なことで、1つはココヘリ登山用GPS地図アプリを正しく理解して活用することだと思います。

毎年約1,200人が道迷いしているけど、地図アプリがあれば自力で道に戻れるし、ココヘリに加入していれば動けない状況であったとしてもヘリが自分を極めて短時間で見つけてくれる。道迷いによる遭難死・行方不明者は限りなくゼロにすることができるはずです。

編集部 大迫
今は新しい技術や便利なものが多くあるので、うまく活用して安全に登山をしてほしいですね。登山用GPSアプリも万能な道具ではないので、「正しく使う」って本当に大事。


「登山の常識」が形骸化?

出典:PIXTA
「遭難防止に地図とコンパスを持っていきましょう」という言葉は、登山をする人なら誰もが一度は聞いたことがある常識の1つ。

しかし、YAMA HACKで行ったアンケートによると、登山において地図とコンパスの両方を持参しているという人はわずか39%。両方を持参している人の中で山座同定(周囲の目標物から地図上での現在地を割り出すこと)ができるのはその中のさらに70%程度という結果が。

これはつまり普段から登山をしている人たちでさえ、およそ4人中3人の登山者が地図とコンパスで自分の場所を割り出すことができないということです。
編集部青柳
啓蒙という視点でもう一つ。登山には様々な常識があるけど、「言葉だけが先行してしまっていることが多いのではないか」って思うことがあるんです。

編集部 大迫
地図とコンパスの場合だと、”持っていく”ことだけでなく”正しく使える”ことに意味があるということですか。

編集部青柳
そう。けっして地図とコンパスが要らないというわけじゃなくて

他の例だと「山岳保険・捜索サービス」に入っている人、「登山届」を提出している人、いずれも40%以下。理由のほとんどは「遭難するような難しい山に登っていないから」。基本的に”遭難しない山”なんて存在しないんですけどね。

編集部 大迫
実際、道も整備されていて多くの人が登っている高尾山ですら、遭難は起きてます。

つまり青柳さんが言いたいのって、「頭ではわかっていても、行動に移せていない山の常識があるんじゃないか」ってことですか。

編集部青柳
ひとつひとつの行動が命を守ることにつながってるからこそ、この機会に自分の登山を見つめ直してみて欲しいです。伝える僕たちも、山に登る一人一人も、その言葉の意味することを噛み砕いて行動に移さない限り、言葉だけが一人歩く気がします。

編集部 大迫
きちんと行動につなげるために、なぜ地図とコンパスが必要なのか?どうして行き先やルートを家族に伝えておかないといけないのか?という「なぜそれが大切なのか」の部分もきちんと理解してもらうようにしていかないといけないですね

編集部青柳
今後もそういう視点のコンテンツ、楽しみにしてます!

業界と登山者にある”もったいないギャップ”を埋めていきたい

YAMA HACK編集部
楽しい情報だけでなく、危険が伴う登山だからこそ安全のための情報発信にも力を入れてきました。ここからは新編集長の大迫が感じている課題と、これから目指したい姿についてお伝えします。

伝えたい人にほど伝わらない現実

スマートフォン
撮影:YAMA HACK編集部
YAMA HACKのアンケートによると、地図アプリをインストールしている人は2,419人中868人(約35%)。これは私たちにまだ届ける力が足りないていないということであり、これから解決しないといけない課題でもあります。
編集部 大迫
「本当に必要な人へ情報が届かない」ということが、安全登山の情報発信をしていて一番難しく感じます。

編集部青柳
それは記事を読んでもらえないということですか?

編集部 大迫
そうですね。もちろんYAMA HACK読者の中にも安全登山の意識が高い人もいて、そういった人は記事を読んでくれます。

でも普段から「遭難」を意識しない人ほど危険なのに、そういった人ほど自分にとって関係ないテーマだと思ってスルーしてしまうんです。そもそも、登山の情報にまったく触れない人もいますし・・・。

編集部青柳
人間は自分にとってメリットのある情報、当事者意識のある情報しか選び取らないですからね。

編集部 大迫
そこは強く感じます。だから興味がない人にも届いてほしいと思って、真面目なテーマでもあえて記事をネタっぽく作ったりしますね。

例えば、Twitterとかで拡散されたりすると、遭難に対する意識が顕在化していない人にも届く可能性があるので。


編集部 大迫
正しいことが教科書のようにならんでいることも大事。でも、それ以上に読んでくれた人に何か伝わったり残ったりすることのほうが大切でしょ?

学校の教科書だと全然わからないけど、マンガだと歴史のこととかわかりやすくなったりするのと似たような感覚ですかね。

編集部青柳
きちんと伝わるのであればネタっぽくなくてもいいんですけどね(笑)。

編集部 大迫
まぁ(笑)。あと、見せ方にばかり目がいって肝心の中身がダメダメでは論外。そこは専門の方に監修を依頼したりして内容には注意をしています。

僕たちの思いに共感して協力してくださる人が増えたことは、本当にありがたいですね。

「安全登山」という言葉をなくして、当たり前に

撮影:YAMA HACK編集部(山岳ガイドをつけての登山研修。自分たちも常に勉強です)
まだまだ多くのやるべきことがあるYAMA HACK。最後に、登山メディアとして今後どのような姿を目指すのか話しました。
編集部青柳
今後、YAMA HACKをどうしていくんですか?

編集部 大迫
登山を楽しむための道具として使ってもらえるようにしたいですね。

編集部青柳
道具?

編集部 大迫
冒頭にあった登山を始めるきっかけの多様化。これはもう止められません。だったらそれに合わせて、登山の専門知識のない人でも興味が持てたり、きちんと理解できる情報が揃う場所にします。

登山業界の人って本当に山が好きな人が多くて知識も豊富なんです。でも、その人たちが持っている貴重な知識や技術が伝わっていない人もいる。

理由はいろいろあるんですけど、この「伝わらないギャップ」を埋めることで、いろんな趣向の登山者が自分の楽しいスタイルで山を楽しめるようにしたいです。

編集部青柳
このギャップを埋めるのが編集者の仕事ですね。「良いコンテンツを作り続ける」ってシンプルだけど、一番大事なことだと思います。

編集部 大迫
良いものなのに伝わらない、理解されないって一番もったい。登山のプロでないからこそわかる一般登山者の視点で、このもったいないギャップを埋めていきます。

最終的には「安全登山」っていう言葉をなくしたいんです。

編集部青柳
どういうこと?

編集部 大迫
安全のための知識や技術は絶対に必要です。でも、安全に配慮して行動することが当たり前になれば、わざわざ「安全登山」という言葉で特別視しなくてもいいと思うんです。


編集部青柳
いいと思います。安全登山に関することが中心だったけど、それ以外にも何かありますか?

編集部 大迫
楽しい部分の情報発信も、もちろん続けますよ。今は山のデータベースを作っています。それを活用して、自分におすすめの山を選んでくれるようなサービスを作成中です。

あとは、登山者も多様化しているので、それぞれの人が楽しめるコンテンツを作りたいですね。YAMA HACKの中にお気に入りの雑誌があるようなイメージ。登山好きの人がちょっと暇な時に「YAMA HACK見るか」ってなってもらえるような、身近な存在になれるようにします。

これからもYAMA HACKをよろしくお願いします

YAMA HACK
撮影:YAMA HACK編集部(山岳ガイドをつけての登山研修)
編集長は変わりますが、YAMA HACKが目指す姿は変わりません。今後も、「登山を楽しむ人を増やしたい」「たくさんの人に山の素晴らしさを知ってほしい」という思いで楽しい記事から真面目な記事まで、読者の皆さんに役立つ情報提供を行っていきます。
これからもどうぞ、よろしくお願いします。
YAMA HACK編集部
撮影:YAMA HACK編集部

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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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