実際の8,000mの苦しさ、デスゾーンの風景とは?
豪太「8,000mでは地上の1/3の気圧になります。少し動いただけで苦しくなるのに、止まっていると苦しさを感じないような気になってくる。それなのに、寝ようと思うと誰かに首を絞められているような気がして夜中に起き出してしまったり、気付いたら手足がどんどん冷たくなってきます。2008年の遠征時には肺水腫や脳浮腫を起こし、朦朧として足に力が入らない状態になってしまい、自分の意識が離れていってしまうのが心細かったです。」
雄一郎「登頂される前、エベレストは山頂に行ってしまえば死んでしまうのではないかと言われたような世界でした。山頂はお湯を沸かすと40度で気泡が出始め、50度くらいで沸騰をはじめるような場所で、崖を登ったりすることで体温も上昇しているため、もう少しで血液が沸騰してしまうかもしれないような極限の状況。そんな中でも一番つらいのは下山の時。降りる途中で【死んでしまった方が楽】と思えるくらいの苦しさがある場所です。」
豪太「実際に登った際、前日に亡くなったバングラディッシュ人の方を見かけました。デスゾーンは命あるものと無いものが近くに存在していて、その隔たりがとても薄い場所。高いところに行けば行くほど天国に近づくのだと感じました。」
雄一郎「死がごく自然に【在る】場所でありながら、上を見上げた時の星空の美しさが非常に印象的で、歩きながらそのまま宇宙に辿り着けるのではないかと思った程でした。」
映画の主題である「遺体の回収」についてどう思われますか?
豪太「行くだけで大変なデスゾーンから、装備を含めたら80kg以上になる成人男性を山から降ろすのは至難の業。(登る際には)グラム単位で軽量化を図るようなことをしているのに、それを考えたらなかなかやれることではないですね。」
MC「もし雄一郎さんが山で亡くなったら、回収に向かわれますか?」
豪太「どうにか降ろすことを考えると思います。実際にはまだまだその心配はなさそうですけどね(笑)。※注2」
注2※前回のエベレスト遠征でのエピソードを踏まえたお話。8,400mあたりのテント場で足に力が入らない雄一郎さんを、なんとかテントに運び入れた豪太さん―早く医者に診てもらわないとマズいなと考えを巡らせている矢先、雄一郎さんを見ると何やらモゴモゴ言っているので「これはいよいよダメか」と思ってよく見たところ、赤飯を食べていたそう!呆気にとられて見ていると、続けざまにラーメンを作り出して食べ、最後にヒマヤラケーキを食べてお腹をポンポン叩いた後、「ふぅ、やっとお腹にモノを入れることができた。」と言い立ち上がり、またスタスタ歩いていったそうです。