2018年夏、こんな企画があったのを覚えてますか?
昨夏、YAMA HACK編集部員Oにより、「果たして山頂でアイスクリームは食べられるのか?」という実験が行なわれました。 「やっとの思いで辿り着いた山頂で、美しい景色を眺めながら食べたいものはアイスクリーム」というアイスクリームラバーの編集O。 いくつものアイスと保冷剤から溶けにくいものを選定、包装も数パターン工夫し臨んだ熱きチャレンジ!
しかし残念ながら、結果はいずれも惜しくも失敗……。
この時、筆者がいつも担ぐ「500缶ビール保冷方法なら可能なのでは…」とこの夏、リベンジに名乗りを上げたのでした!
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現実的、かつ最強の保冷方法とは!?
その方法がこれ。 定番のISKAのコンパクトクーラーに冷凍PET×2本、その間にチョコモナカジャンボを挟み、更に保冷剤を上からかぶせ蓋を閉めるというもの。 缶ビールの場合は、冷凍PET×1本とビール×1本、保冷剤で持ち運びますが、テント泊時、2日目の昼でもまだキンキンなのです。
今回はISKAのコンパクトクーラーを100均の保冷バッグで更に包み、ザックに入れ持ち運びます。 チャレンジ当日AM5時、最強と自負する筆者式パッキングにて梱包完了!
この方法の良いところは、持参した冷凍PETは用を終えたあとも冷たい飲み物として楽しめること。 正直、自信満々です!
「山頂DEアイス」、レッツトライ!
夏真っ盛りの8月盆、行き先は、標高が高過ぎず低過ぎない2,000m級の「根子岳-四阿山」。 途中のコンビニでAM5時にアイス類を購入しパッキングしました。
登山口である菅平牧場の標高は1,600m弱でとても涼しく気温17℃。
パッキングからすでに1時間半が経過したAM6時半、ハイクスタートです!
牛に話しかけるほど自信しかない筆者
登山道沿いの牧草地では牛たちが朝食中。「牛クン、今日は山頂でチョコモナカジャンボを食べるんだよ、良いでしょ」などと話し掛け余裕の筆者。 それはもう自信しかありませんから!
余裕なので三角点まで行っちゃお〜っと
その後、根子岳山頂を経由して、目的地である四阿山にAM9:30ごろ到着。 パッキングから4時間半、時間的に開封にピッタリ。 が、繰り返しますが自信満々の筆者。 奥の三角点まで往復し、加えて昼ごはんを食べた後のスイーツにしようと更に時間を稼ぎます。
お昼を食べて…いざ!開封の儀
AM10:30、パッキングから5時間半が経過したところで開けてみると…やはり保冷剤はカッチカチ、冷凍PETもまったく溶けていない状態で、早くも勝利の笑みがこぼれる筆者。 山頂気温は20℃か…少し涼し過ぎて読者の皆さまに申し訳ないな、と恐縮しながらいざ開封。
!!!!?
がしかし!! と、溶けている…!
そんなまさか…なぜなんだ…。 そうだ、念のため割って中身を見てみよう。
まさかのドロドロ…。
自信満々だっただけに動揺の色を隠せない筆者。 やはり5時間半は長過ぎたのか? 4時間ならイケたのか?
完全敗北で失意の下山に…。
最強の助っ人登場 ~事前検証~
改めて「-18℃以下保存」の壁を考えてみる。 この環境を登山中に作るのはまず不可能。 アイスクリームは何℃から溶けるのだろう、例えば -10℃だとアイスはどうなるのだろう…。 疑問ばかりが湧き上がる。 やはりこれは最強の助っ人、森永製菓さんへ問い合わせるしかない!
ちなみに筆者は、根っからのチョコモナカジャンボファン。 当該企画に関係なく、アイスと言えばチョコモナカジャンボ (以下ジャンボ) のため、熱き想いを広報担当者さんに伝えると、なんと研究員さんの協力を仰げることに!
森永研究員さんの後ろ盾をもらえれば鬼に金棒です!
研究員
1kg板のドライアイスを新聞紙で覆い、ジャンボを2枚のドライアイスで挟み込み、できるだけ小さな発泡スチロールの容器で運んでください。 そうすれば、5時間はまず問題ないかと思います。
研究員
ドライアイスはネットや氷屋などで購入することが出来ますが、お手軽さという点でやはり採用は見送り。 となると、現在の保冷方法で「何時間までならジャンボを楽しめるのか」を知る必要があります。
そこで導入したのは、コードセンサー付き温度計。まずは冷凍庫内の温度を測定すると、やはり-19℃ほどとかなり低いことがわかりました。 そして、保冷方法は前回と同じISKAのコンパクトクーラーに100均保冷バッグ、冷凍PET×2本、保冷剤×1個です。
-1.7℃で実験開始!
センサーを内部に挿入、ジャンボの環境温度をモニターします。 森永製菓研究員さんのアドバイスでは、-3℃前後がアイスの融点とのことのため、今回 「-4℃を限界点」と決め、何時間持つのかを確認することにしました。 (室温=約25℃)
開始から2時間後には-5℃に
開始からおよそ6分半、ジャンボ環境温度は -12.3℃まで下がりました(意外に下がるものなんですね! )。その後、30分後に-10℃、1時間後に-7.8℃、1.5時間後に-6.2℃、2時間後に-5.0℃と温度が上昇していきます。 もうこのあたりが限界か?!
そして2時間半後に-4.3℃となり、開始から2時間44分後、ついに-4℃を超え-3.9℃に到達! ここが限界とジャンボの状態を確認してみることに。
当然ですが、保冷剤も冷凍PETもカッチカチで一切溶けていません。 ここまでは前回と同じ。
さて、果たしてチョコモナカジャンボはどうなっているのか?!
横から見るとまったく溶けていません!
前回は溶け出したアイスが漏れ出していました。 しかし早合点はいけません、念のため 割って中身を見てみましょう。
割る際、押し潰してしまいましたが、課題のアイスミルク部分は溶けていません! 食べてみると、少しだけやわらかめではありますが充分な美味しさ。 やはり森永研究員さんのアドバイスに従い、-4℃を限界点としたのが良かったようです。 また、室温25℃の環境下ではおよそ2時間45分でしたが、ハイク時の目安としては「2時間~2時間半」と設定すれば良さそうです。
さぁ、これでリベンジの条件は揃いました。 次こそは達成できそうです!
しかしこの時、予想外のハプニングに見舞われることを知る由もない筆者だった…
いざリベンジへ!が、まさかのハプニング発生!
残暑厳しい9月初旬、同じく根子岳ー四阿山にて気温22℃でのスタート。 ジャンボ喫食可能時間を2~2.5時間と設定したため、スピードハイクで行けば、ちょうど根子岳を経由し四阿山に到着する時間です。 念のため、今回はコード式センサーを挿入し、温度をモニターしながら登ります。
想定外のハプニングはスタート直後に発生した!
なんとジャンボ環境温度が、-6.1℃までしか下がりません!(WHY!?チョコモナカジャンボ〜!)
事前検証では-12℃まで下がりましたが予想外の大誤算! どうやら自宅冷凍庫で数日寝かせたものと、扉開閉の頻繁な最寄りのコンビニ冷凍庫では、冷凍PETそのものの温度が異なるという事が発覚!
しかもこの日はド快晴。 前回の盆よりも日差しが強く暑いため、あっという間にジャンボ環境温度が上がっていきます。 これは四阿山へ行くどころではない、せめて根子岳まで持ってくれるのか?!
しばらくすると道標が。 行程のおよそ2/3を終え、時間を確認するとハイク開始からまだ28分、パッキングを終えてから43分しか経過していません。 気の焦りでついつい早足になってしまっていたようです。 このペースだと後15分ほどで山頂に到着してしまうため、ここからペースを落とします。
しかしその時、既にジャンボ環境温度は-2.5℃。
今回は絶対に成功するだろうと意気揚々だった筆者、失意の結末となる心の準備をするしかありませんでした…。
トボトボ歩いて根子岳に到着、パッキングを終えてから1時間10分。 切りの良いところで、1時間15分まで待ってジャンボを開封することに。
しかし、ジャンボ環境温度はすでに -0.5℃。
き、厳しい…。 なんという難しい企画なのだ…!
想定していた2~2.5時間と比べずいぶんと短くなってしまいましたが、とにかく1時間15分経過での状態を確認してみることに。 保冷剤はカチカチですが、冷凍PETは少し溶け始めて若干の液体も確認できました。
とりあえず結果を見てみるか
とにかくジャンボを開封、サイドを見てみると…
おや?意外にも溶けていない?
反対側を確認しても溶けているようには見えません。 しかし、半信半疑なままとにかく割ってみることに。
せーのっ
「パリィッ!!」
驚くほど乾いた音と共に見事に真っ二つに割れたのでした!
その驚きは言葉に言い表せません。 1時間15分と短い持ち運び時間ではありましたが、まさかあの高温に持ち堪えてくれるとは予想だにしなかったのです。
根子岳山頂にて、こんな大絶景を眺めながら大好物のチョコモナカジャンボを食べる…。 最高でした。
が、今回のチャレンジもいくつかの課題が発生してしまい、どなたにも自信を持って推奨できる方法に至らなかったのが残念です。
点数を付けるとしたら 60点というところでしょうか…。
でも、やっぱり山頂で食べるアイスは非日常感がすごい!
ですが、ひとまず今回は、「山頂DEアイス」の方法に一歩近づけたこと、そして、山頂でアイスを食べることがこれほど非日常的で素晴らしいことだとわかっただけでも大収穫とし、2019年夏の熱いチャレンジは締めくくることに…。
チョコモナカジャンボよ、夢とドラマをありがとう!
割った時のあの音と感動は、しばらく忘れられそうにありません。
2020年にはまた熱いチャレンジの夏が訪れそうです。
それでは皆さん、どうぞ良いハイクを!