ここまでは水蒸気を多く含んだ空気が山の斜面にそって上昇することで、山が雲に覆われやすくなることを学んできました。
しかしながら、空気が上昇し続けなければ、雲は落雷や強雨をもたらす雲にはなっていきません。
そこで次は落雷や強い雨をもたらすような積乱雲が発生する仕組みについて解説します。代表的な二つの注意すべき例を見ていきましょう。
①大気の状態が不安定なとき
天気予報で「大気の状態が不安定」というワードを耳にしたことはありませんか?
大気が不安定な状態とは、
1.上層に冷たい寒気があるとき
2.下層に暖かい空気があるとき
3.下層に暖かく湿った空気があるとき
を指します。このとき暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ向かう動きが起こり、強力な上昇気流が発生します。
これにより急激に発達した雲が「積乱雲」となり、カミナリを伴った大雨を降らせるのです。
「積乱雲(せきらんうん)別名:入道雲」は山で最も危険な雲のひとつ。大きく発達した天空の城ラピュタのような巨大雲が、時には災害級の大雨をもたらします。特に大気中に水蒸気が多い夏山シーズンに発生しやすいので注意が必要。
天気予報で「大気の状態が不安定」が予想される場合は、無理のない早め早めの行動を心がけるようにしましょう。
②海から風が吹き込むとき
海の上は水分が蒸発しているので、水蒸気を含んだ空気がたくさん。この海からの風が山にぶつかると、上昇気流が発生し、風上側で天気が崩れやすいことが予想されます。
例えば、夏場の富士山で静岡県側から風が吹く場合は、静岡県側で特に天候悪化や積乱雲の発達に注意が必要です。
風向予報はWEBの天気予報でチェックすることができるので、登山に行く際には風向にも目を向けてみましょう!
また基本的に上昇気流は風上で発生するので、風上側の街の天気予報を参考にすると良いです。
天気の動きを予想し、答え合せをしてみよう!
天気が移り変わる仕組みを理解することで、自分の力でこれからの天気がどうなるかを予想し実際にどんな天気になったかを確かめることができます。
晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、その時々の山がどうなっているかを考えてながら空を見上げると、また新たな視点での山登りが楽しめますよ。
■山の天気が変わりやすいのは、雲を作る原因になる”上昇気流”が発生しやすいから
■たくさん水分を含んだ空気は悪天候の予兆
■「大気の状態が不安定」が予想される時は、積乱雲に要注意
監修:猪熊隆之さん
山岳天気予報士であり、国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンの代表取締役。
「猪熊隆之の観天望気講座」やチーム安全登山会員用ページの「登山講習」で「雲から山の天気を学ぼう」という連載を行い、登山中に見られた雲や登山前に確認すべき天気図のポイントについてわかりやすく解説。
ヤマテンでは、全国18山域59山の山頂の天気予報、及びその山域の詳細な気象リスクや、天気の解説を発表しています。
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