今日は何の日?

「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」とされている今日だからこそ、”山登りの楽しみ方”について考えてみましょう。

山の日という特別な日だからこそ、普段から様々な形で山に関わっている4名の方に、プライベートでの登山の楽しみ方について聞いてきました。
個性豊かな4名のゲストスピーカー

日本山岳救助機構合同会社 代表 若村勝昭さん

登山ガイド 岩田京子さん

写真家 上田優紀さん

株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン マーケティング部 新井春菜さん
普段の仕事では関わることの少ないこの4名。それぞれの立場から、どんな山の楽しみ方を教えてくれるのか楽しみですね。
それでは、座談会の始まりです!
1人かグループ、あなたはどっち?

上田さん
さっそくですが、みなさんは1人で登るのと、グループで登るのとでは、どっちが多いですか?
自分、友達がすっごく少なくて…。仕事以外で人と山に登ったことが無いんですよ。
「グループ登山の楽しさ」を知りたいです。
自分、友達がすっごく少なくて…。仕事以外で人と山に登ったことが無いんですよ。
「グループ登山の楽しさ」を知りたいです。
岩田さん
ん~、私はどちらの場合もあるけど、できればみんなで行きたいな、とは思ってます。

岩田さん
最初は1人になりたくてソロで登っていたのですが、撮った写真を見れくれた人が反応してくれて。それから人と登るようになりましたね。
誰かと一緒に登ると、自分では気づかない発見ができたり、喜びを共有できたり。
一緒に過ごす時間が長いので、深いことまで話せるようになるもいいですね。
誰かと一緒に登ると、自分では気づかない発見ができたり、喜びを共有できたり。
一緒に過ごす時間が長いので、深いことまで話せるようになるもいいですね。
新井さん
私も最初は1人でした!でも、アメリカのジョン・ミューア・トレイルを1人で1ヵ月歩いた時に、孤独を感じて…。美しい景色を見た時に共有できる相手が欲しくなったんです。
今ではご飯を作ったり、山頂を目指す以外の目的ができるのが、大勢で行く楽しみだと思います。
今ではご飯を作ったり、山頂を目指す以外の目的ができるのが、大勢で行く楽しみだと思います。
上田さん
ちなみに、誰かと行くときは誘う側ですか?
岩田さん
私は誘うというより、まず「この日に登る!」と決めてます。
もし日程が合えば一緒に行こう、みたいな。
もし日程が合えば一緒に行こう、みたいな。

若村さん
昔は「山岳会に入る」っていうのがグループ作りの主流でしたね。私も社会人山岳会に入って登っていました。
そうするとね、みんな自分のことをしゃべるんですよ。家庭の問題とか、子供の話とか、いわゆる愚痴(笑)。
下山後「話を聞いてもらって良かった!」って言われたりして、それはそれで一緒に行って良かったなと思います。
そうするとね、みんな自分のことをしゃべるんですよ。家庭の問題とか、子供の話とか、いわゆる愚痴(笑)。
下山後「話を聞いてもらって良かった!」って言われたりして、それはそれで一緒に行って良かったなと思います。
上田さん
僕は自然を楽しみに行くのも好きなんですけど、それよりも先に”写真を撮りに行く”っていうことが自分の中で山に登る目的になっているんです。
それもあって、人と登りづらいんですよね…。
それもあって、人と登りづらいんですよね…。
若村さん
上田さんの場合、山は「仕事の場」になってしまっているんだね。

上田さん
山は自分の中に深く入っていくのに適した環境だと思うんです。特に、追い込まれたときこそ、自分がどういう人間なのか分かりますよね。
新井さん
グループ登山ももちろん楽しいですが、自分と向き合えるのもソロ登山の醍醐味だと思います。

上田さん
ちなみに…下山中はみなさん何を考えていますか?
若村さん
下山した時の反省会ですよ。それ以外ない。どこの居酒屋行ってとか、もうそれしか考えてないです(笑)。
新井さん
同感です(笑)!
岩田さん
私は次どこに行こうかな〜って。なんなら、登っている時から次の山のことを考えてる場合もあります。
ビールは考えなくても必ず飲むので!下山後のビールと温泉はセットです(笑)。
ビールは考えなくても必ず飲むので!下山後のビールと温泉はセットです(笑)。
「どう楽しむのか」こそが登山の醍醐味

上田さん
登山の目的ってピークを踏むだけじゃないですよね。
若村さん
テレビ番組で”山小屋に行くこと”を目標にしている人が紹介されていましたが、それも立派な山に登る目的です。
岩田さん
登山者がどう山を楽しんでいるのか、観察するのも面白いですね。
景色がいい場所でご飯を食べにきたんだとか、小学生とお父さんが星を見るために山に登ったんだ、とか。
景色がいい場所でご飯を食べにきたんだとか、小学生とお父さんが星を見るために山に登ったんだ、とか。
若村さん
何を食べているかを見るのも面白いです。
昔、帝釈山の山頂に七輪を持ってきて、なんと”クサヤ”を焼いている人に出会ったことがあって…あれには驚きました。
昔、帝釈山の山頂に七輪を持ってきて、なんと”クサヤ”を焼いている人に出会ったことがあって…あれには驚きました。
新井さん
私は毎回、山に登る目的を変えています。
今回は”美味しいごはん”とか、今回は”温泉”とか、仲間と目的を変えて山登りを楽しんでいます。
今回は”美味しいごはん”とか、今回は”温泉”とか、仲間と目的を変えて山登りを楽しんでいます。

上田さん
山ごはんにこだわっている人って凄いですよね!僕はこだわりがなくて、主にアルファ米…。
でも唯一、コーヒーにはこだわっていて、毎回山で豆を挽いて飲んでいます。
でも唯一、コーヒーにはこだわっていて、毎回山で豆を挽いて飲んでいます。
岩田さん
山で飲むコーヒーって、なんであんなに美味しいんですかね。
若村さん
私が学生の頃は、山の食事に知恵を使うことはあまりなかったですね。
グループで1〜2週間も山に入る合宿では、とにかく簡単に作れるものにこだわって、お酒も一切持って行かなかったです。
グループで1〜2週間も山に入る合宿では、とにかく簡単に作れるものにこだわって、お酒も一切持って行かなかったです。
新井さん
えーーー!私は絶対お酒持っていきます。
それが一番の目的かもしれないです(笑)。
それが一番の目的かもしれないです(笑)。

上田さん
山で食べた一番美味しかったものってなんですか?
岩田さん
知り合いの方が握ってくれたおにぎり。”わざわざ私のために持ってきてくれた”という愛情を感じて、とっても美味しかったです!
上田さん
気持ちって最大の調味料ですよね!アマ・ダブラムに行ったとき、シェルパがサプライズで出してくれたお餅…未だにあれを越える食べ物に出会っていません。

新井さん
……恥ずかしいですが…カップラーメン。
一同:あーーーーーーーーーーーー(笑)。間違いないですね!
誰もが詩人になれる。山でしか味わえない楽しみ
登山での楽しみ方として、初級者でも始めやすい山ごはん。でも山の楽しみ方は他にもある、と若村さんはいいます。
若村さん
皆さん「山日記」って書きますか?
新井さん
書いたことないです。なんですかそれ?
若村さん
昔は山日記っていう、A5サイズよりもちょっと小さいノートが売っていたんです。そこに日記を書くんですね。
何年後かにそのノートが出てきたから久しぶりに読んてみたら、それが恥ずかしくて。
女性への思いの丈が書かれていたり、1人で登山に行った時は自分に対する、それこそ内省的なことも書いてたりね。
この頃、自分は哲学者になっていたんだなって思いましたね。
何年後かにそのノートが出てきたから久しぶりに読んてみたら、それが恥ずかしくて。
女性への思いの丈が書かれていたり、1人で登山に行った時は自分に対する、それこそ内省的なことも書いてたりね。
この頃、自分は哲学者になっていたんだなって思いましたね。
新井さん
え~なんか素敵ですね!

上田さん
僕もノートとペンを持って、山頂へアタックする時の気持ちとかを記録しています。でも、誰かに見せるつもりはないんで、恥ずかしいことばかり綴られていますね。カッコつけてるというか、「やってやるぞ!」みたいな。
とてもじゃないけど他の人には公表できないです。
とてもじゃないけど他の人には公表できないです。
新井さん
公表できないと言われると、さらに深堀りしたくなりますね(笑)。

岩田さん
私がエベレストに登ったときは、紙じゃなくて携帯のメモに残していました。感じた気持ちとか、体調のこととか。
あれって、山の中で書かないとダメなんですよね。下山してからだとすごい美化されちゃう。山の中だと本心が記録できるんです。
あれって、山の中で書かないとダメなんですよね。下山してからだとすごい美化されちゃう。山の中だと本心が記録できるんです。
新井さん
なんか山日記っていいですね。書くのを目的に山に登りたくなってきました(笑)。
若村さん
あれは、山の空気とか雰囲気とか、山の精気が書かせるんです。そして本当に詩人になれるし、作家になれる。
その時の純粋な自分に酔えますよ。
その時の純粋な自分に酔えますよ。
「登山初級者でも楽しめる山」ってどこがおすすめ?
登山を始めたての初心者の時は、ロープウェイを使ったり、短時間で登れる低山などから楽しんでいたのではないでしょうか?道具も少しずつ揃ってきてステップアップし、「登山初級者」くらいになってくると、さらに色々な絶景を見てみたくなってくる頃だと思います。
そこで最後に、”登山初級者”の方でも楽しめる、オススメの山域について伺いました。

新井さん
八ヶ岳はおすすめですね。初めての登山だと遭難の怖さがあると思うんですが、人がいっぱいいるし、情報も豊富にあるから安心でできます。
上田さん
僕も八ヶ岳かな。
岩田さん
他のガイドさんが言ってたんですけど、八ヶ岳は外国の方を案内しても恥ずかしくないそうです。山小屋もしっかりしているし、日本の自然の良さ、例えば苔がある風景とかも満喫できる。

新井さん
景色が変わるのは面白いですよね。苔の森から岩稜帯まであって、お花畑もあるじゃないですか。山の魅力を凄い楽しめる。
岩田さん
登山口までバスが出てるから、アクセスも容易ですしね。山小屋をつなげて歩くこともできるし、テント泊も楽しめる。登山レベルに合わせて色々な計画できるのがいいですね。
山小屋のご飯も美味しいし、温泉が付いている施設もありますよね。
山小屋のご飯も美味しいし、温泉が付いている施設もありますよね。
若村さん
ステーキ美味しいですよね!

上田さん
えっ!?山小屋でステーキが食べられるんですか?
岩田さん
赤岳鉱泉は夕食にステーキを出してくれますね。オーレン小屋は馬肉料理が名物だったはず。ぜひ今度食べてみてください(笑)
人の数だけ山の楽しみ方はある
