業界の人ってどんな登山してるの?『山の日』だからこそプライベートを根掘り葉掘り聞いてみた

2019/08/13 更新

日頃YAMA HACKの記事を読まれている読者の皆さん。本日8月11日は「山の日」です!祝日法第二条で「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」とされている今日だからこそ、これから益々山を楽しむための、ヒントを提供できるような企画を考えました。それが先月下旬に開かれた山の仕事人たちによる特別座談会。日々の仕事で何らかの形で山に関わるゲストスピーカーたちは、普段何を楽しみに山に登っているのでしょうか?ざっくばらんな会話中に、山登りをより面白く、そして豊かにするアイデアが隠れているかもしれません。

アイキャッチ画像:いらすとや

今日は何の日?

山の日
出典:PIXTA
本日8月11日は、国民の祝日「山の日」。多くの登山者で賑わうこの日、みなさんはどんな登山を楽しんでいますか?
「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」とされている今日だからこそ、”山登りの楽しみ方”について考えてみましょう。

撮影:YAMA HACK編集部
救助隊員や山岳カメラマンなど、山というフィールドの中で仕事をしている人たち。登山用品を販売したり、登山技術を教えたり、登山者を通じて山に関わっている人たち。普段”仕事”として山に関わっている人達がプライベートではどのように山を楽しんでいるのか、気になりませんか?

山の日という特別な日だからこそ、普段から様々な形で山に関わっている4名の方に、プライベートでの登山の楽しみ方について聞いてきました。

個性豊かな4名のゲストスピーカー

若村勝昭
撮影:YAMA HACK編集部
日本山岳救助機構合同会社 代表 若村勝昭さん
捜索救助のコンサルや山岳遭難・救助費用の補填、救助隊派遣の斡旋や講演会など、新しい山岳遭難対策制度「jRO(日本山岳救助機構会員制度)」を運営している。
中学生の頃、ボーイスカウトから山に接し、大学サークル、社会人山岳会に所属。一旦山から遠ざかるが復帰。東京都山岳連盟の役員後に、現在の立場で仕事として山と関わることになる。

岩田京子さん
撮影:YAMA HACK編集部
登山ガイド 岩田京子さん
日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。アウトドアメーカーで勤務した後、登山ガイドに。主に初心者から中級者を対象に山を案内している。
海外トレッキングの添乗業務なども行いながら、2016年にチョ・オユー(8,201m)、2017年にマナスル(8,163m)、そして今年ローツェ(8,516m)・エベレスト(8,848m)に登頂。

上田優紀さん
撮影:YAMA HACK編集部
写真家 上田優紀さん
”記録”ではなく”未知の風景”を届けるため、国内外の風景を中心に撮影活動をする写真家。
1年半の世界一周旅行で写真の魅力に気付き、未知の世界に出会った時の心の揺れが、人々の心を豊かにすることを心情に、魅力的な作品を発表している。2018年にアマ・ダブラム(6,856m)登頂。2019年秋にマナスルに挑戦予定。

新井春菜さん
撮影:YAMA HACK編集部
株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン マーケティング部 新井春菜さん
コロンビアやマウンテンハードウェアなど、様々なブランドからたくさんのアウトドア商品を展開する大手アウトドアメーカー「株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン」所属。
高校では山岳部、大学ではキャンピングツアー部でアウトドアを楽しむ。アメリカのロングトレイルの1つである”ジョン・ミューア・トレイル”の踏破経験もあり。現在はクライミングからトレランまで、幅広く山で遊んでいる。

普段の仕事では関わることの少ないこの4名。それぞれの立場から、どんな山の楽しみ方を教えてくれるのか楽しみですね。
それでは、座談会の始まりです!

1人かグループ、あなたはどっち?

座談会2
撮影:YAMA HACK編集部
上田さん
さっそくですが、みなさんは1人で登るのと、グループで登るのとでは、どっちが多いですか?

自分、友達がすっごく少なくて…。仕事以外で人と山に登ったことが無いんですよ。
「グループ登山の楽しさ」を知りたいです。

岩田さん
ん~、私はどちらの場合もあるけど、できればみんなで行きたいな、とは思ってます。

撮影:YAMA HACK編集部
岩田さん
最初は1人になりたくてソロで登っていたのですが、撮った写真を見れくれた人が反応してくれて。それから人と登るようになりましたね。
誰かと一緒に登ると、自分では気づかない発見ができたり、喜びを共有できたり。

一緒に過ごす時間が長いので、深いことまで話せるようになるもいいですね。

新井さん
私も最初は1人でした!でも、アメリカのジョン・ミューア・トレイルを1人で1ヵ月歩いた時に、孤独を感じて…。美しい景色を見た時に共有できる相手が欲しくなったんです。

今ではご飯を作ったり、山頂を目指す以外の目的ができるのが、大勢で行く楽しみだと思います。

上田さん
ちなみに、誰かと行くときは誘う側ですか?

岩田さん
私は誘うというより、まず「この日に登る!」と決めてます。
もし日程が合えば一緒に行こう、みたいな。


座談会7
撮影:YAMA HACK編集部
若村さん
昔は「山岳会に入る」っていうのがグループ作りの主流でしたね。私も社会人山岳会に入って登っていました。

そうするとね、みんな自分のことをしゃべるんですよ。家庭の問題とか、子供の話とか、いわゆる愚痴(笑)。
下山後「話を聞いてもらって良かった!」って言われたりして、それはそれで一緒に行って良かったなと思います。

上田さん
僕は自然を楽しみに行くのも好きなんですけど、それよりも先に”写真を撮りに行く”っていうことが自分の中で山に登る目的になっているんです。
それもあって、人と登りづらいんですよね…。

若村さん
上田さんの場合、山は「仕事の場」になってしまっているんだね。


撮影:YAMA HACK編集部
上田さん
山は自分の中に深く入っていくのに適した環境だと思うんです。特に、追い込まれたときこそ、自分がどういう人間なのか分かりますよね。

新井さん
グループ登山ももちろん楽しいですが、自分と向き合えるのもソロ登山の醍醐味だと思います。


撮影:YAMA HACK編集部(お酒の話になると、自然と笑顔が溢れます。笑)
上田さん
ちなみに…下山中はみなさん何を考えていますか?
若村さん
下山した時の反省会ですよ。それ以外ない。どこの居酒屋行ってとか、もうそれしか考えてないです(笑)。

新井さん
同感です(笑)!

岩田さん
私は次どこに行こうかな〜って。なんなら、登っている時から次の山のことを考えてる場合もあります。
ビールは考えなくても必ず飲むので!下山後のビールと温泉はセットです(笑)。

「どう楽しむのか」こそが登山の醍醐味



撮影:YAMA HACK編集部
上田さん
登山の目的ってピークを踏むだけじゃないですよね。

若村さん
テレビ番組で”山小屋に行くこと”を目標にしている人が紹介されていましたが、それも立派な山に登る目的です。

岩田さん
登山者がどう山を楽しんでいるのか、観察するのも面白いですね。
景色がいい場所でご飯を食べにきたんだとか、小学生とお父さんが星を見るために山に登ったんだ、とか。

若村さん
何を食べているかを見るのも面白いです。
昔、帝釈山の山頂に七輪を持ってきて、なんと”クサヤ”を焼いている人に出会ったことがあって…あれには驚きました。

新井さん
私は毎回、山に登る目的を変えています。
今回は”美味しいごはん”とか、今回は”温泉”とか、仲間と目的を変えて山登りを楽しんでいます。


座談会8
撮影:YAMA HACK編集部(ご飯の話を楽しそうに語る新井さん)
上田さん
山ごはんにこだわっている人って凄いですよね!僕はこだわりがなくて、主にアルファ米…。
でも唯一、コーヒーにはこだわっていて、毎回山で豆を挽いて飲んでいます。

岩田さん
山で飲むコーヒーって、なんであんなに美味しいんですかね。

若村さん
私が学生の頃は、山の食事に知恵を使うことはあまりなかったですね。
グループで1〜2週間も山に入る合宿では、とにかく簡単に作れるものにこだわって、お酒も一切持って行かなかったです。

新井さん
えーーー!私は絶対お酒持っていきます。
それが一番の目的かもしれないです(笑)。


撮影:YAMA HACK編集部
上田さん
山で食べた一番美味しかったものってなんですか?

岩田さん
知り合いの方が握ってくれたおにぎり。”わざわざ私のために持ってきてくれた”という愛情を感じて、とっても美味しかったです!

上田さん
気持ちって最大の調味料ですよね!アマ・ダブラムに行ったとき、シェルパがサプライズで出してくれたお餅…未だにあれを越える食べ物に出会っていません。


座談会5
撮影:YAMA HACK編集部
新井さん
……恥ずかしいですが…カップラーメン。


一同:あーーーーーーーーーーーー(笑)。間違いないですね!

誰もが詩人になれる。山でしか味わえない楽しみ

登山での楽しみ方として、初級者でも始めやすい山ごはん。でも山の楽しみ方は他にもある、と若村さんはいいます。

撮影:YAMA HACK編集部
若村さん
皆さん「山日記」って書きますか?
新井さん
書いたことないです。なんですかそれ?

若村さん
昔は山日記っていう、A5サイズよりもちょっと小さいノートが売っていたんです。そこに日記を書くんですね。
何年後かにそのノートが出てきたから久しぶりに読んてみたら、それが恥ずかしくて。

女性への思いの丈が書かれていたり、1人で登山に行った時は自分に対する、それこそ内省的なことも書いてたりね。
この頃、自分は哲学者になっていたんだなって思いましたね。

新井さん
え~なんか素敵ですね!


出典:PIXTA
上田さん
僕もノートとペンを持って、山頂へアタックする時の気持ちとかを記録しています。でも、誰かに見せるつもりはないんで、恥ずかしいことばかり綴られていますね。カッコつけてるというか、「やってやるぞ!」みたいな。

とてもじゃないけど他の人には公表できないです。

新井さん
公表できないと言われると、さらに深堀りしたくなりますね(笑)。


撮影:YAMA HACK編集部
岩田さん
私がエベレストに登ったときは、紙じゃなくて携帯のメモに残していました。感じた気持ちとか、体調のこととか。

あれって、山の中で書かないとダメなんですよね。下山してからだとすごい美化されちゃう。山の中だと本心が記録できるんです。

新井さん
なんか山日記っていいですね。書くのを目的に山に登りたくなってきました(笑)。

若村さん
あれは、山の空気とか雰囲気とか、山の精気が書かせるんです。そして本当に詩人になれるし、作家になれる。
その時の純粋な自分に酔えますよ。

「登山初級者でも楽しめる山」ってどこがおすすめ?

登山を始めたての初心者の時は、ロープウェイを使ったり、短時間で登れる低山などから楽しんでいたのではないでしょうか?

道具も少しずつ揃ってきてステップアップし、「登山初級者」くらいになってくると、さらに色々な絶景を見てみたくなってくる頃だと思います。

そこで最後に、”登山初級者”の方でも楽しめる、オススメの山域について伺いました。

座談会6
撮影:YAMA HACK編集部
新井さん
八ヶ岳はおすすめですね。初めての登山だと遭難の怖さがあると思うんですが、人がいっぱいいるし、情報も豊富にあるから安心でできます。

上田さん
僕も八ヶ岳かな。

岩田さん
他のガイドさんが言ってたんですけど、八ヶ岳は外国の方を案内しても恥ずかしくないそうです。山小屋もしっかりしているし、日本の自然の良さ、例えば苔がある風景とかも満喫できる。


出典:PIXTA
新井さん
景色が変わるのは面白いですよね。苔の森から岩稜帯まであって、お花畑もあるじゃないですか。山の魅力を凄い楽しめる。

岩田さん
登山口までバスが出てるから、アクセスも容易ですしね。山小屋をつなげて歩くこともできるし、テント泊も楽しめる。登山レベルに合わせて色々な計画できるのがいいですね。
山小屋のご飯も美味しいし、温泉が付いている施設もありますよね。

若村さん
ステーキ美味しいですよね!


撮影:YAMA HACK編集部
上田さん
えっ!?山小屋でステーキが食べられるんですか?

岩田さん
赤岳鉱泉は夕食にステーキを出してくれますね。オーレン小屋は馬肉料理が名物だったはず。ぜひ今度食べてみてください(笑)

人の数だけ山の楽しみ方はある

山の日
出典:PIXTA
4名のゲストピーカーの話から、いろいろな楽しみ方を知ることができた今回の座談会。写真を撮ることを目的にするのも楽しそうだし、山ごはんにこだわるのもいいですよね。人それぞれの楽しみ方があって、それがネットワークのように繋がって、そこからまた新しい楽しみ方が生まれるのかもしれません。これからも山登りをエンジョイしましょう!

関連する記事

関連する山行記録 byヤマレコ

この記事が気に入ったら
「いいね!」をしよう
吉澤英晃
吉澤英晃

群馬県出身。大学時代に所属した探検部で登山を開始。以降、沢登り、クライミング、雪山、アイスクライミング、山スキーなど、オールジャンルで山を楽しむ。登山用品の営業職を経て、現在はフリーの編集・ライターとして活動中。

登山専用コミュニティサイト「ヤマレコ」

OFFICIAL SNS

アウトドアのすべてを、ひとつのアプリで。

150以上のアウトドアメディアの記事や動画、3万枚以上のみんなの写真も見られる!
アウトドアの「知りたい!」「行きたい!」がきっと見つかる!
お気に入りの記事や写真を集めて、スキマ時間に素早くチェック!