庄太郎さん
ライターになりたい人って、どうしても文章力を真っ先に気にするんだけど、ぶっちゃけ書く日本語の能力はそこまで大事じゃないんだ。山岳ライターに必要なのは取材力や人脈、それと自力で山に登って下山する登山スキルなどの総合力。書くことだけじゃないんだ。
ライター吉澤
なるほど。
庄太郎さん
取材力を高めようと思ったら、例えばアウトドアメーカーの展示会に足を運んで、新商品の情報を集めるといったことができるよね。一歩先の情報を誰よりも先に掴んで記事にできる人は重宝される。

ライター吉澤
展示会に行くと、メーカーの人とも知り合えますよね。
庄太郎さん
そう! さらにそれが重要で、人脈ができると新しい情報がどんどん入ってきて仕事の幅が広がるしスピードも変わってくる。道具のサンプルを借りるにしても、企画書を要求される人もいれば、電話一本で仕事を済ませられる人もいる。この差は大きいよね。
ライター吉澤
ほかにもありますか?
庄太郎さん
これは道具の記事を書く上で僕が実践してきたことなんだけど、展示会で新製品をチェックする、実際に山に行く、新製品を現場で使ってみる、このサイクルを回しながら仕事につなげていくといいと思う。やっぱり現地で得た情報に勝るものはないよね。
ライター吉澤
すごく勉強になります!
ずばり、山岳ライターは儲かるのか?
ライター吉澤
好きなことをしてお金をもらえるなんて、やっぱり山岳ライターって夢のような仕事だなと思います。そこでずばり聞きたいのですが、山岳ライターで儲けることはできるのでしょうか?
庄太郎さん
これはもちろん人それぞれだけど、少しだけ希望がある話をすると、僕は同年代のサラリーマンの平均年収よりは稼いできたと思う。
ライター吉澤
おお!それは凄い! 生活はちょっと裕福になりましたか?
庄太郎さん
ただ、フリーランスはサラリーマンより多く稼がないと同じ生活を送れないってよく言うでしょ。だからリッチな生活はしていない。しかも、サラリーマン時代より倍忙しくなったね。
ライター吉澤
働いている時間で計算すると、ぶっちゃけ時給単価は低い?
庄太郎さん
そうだね〜、残業っていう概念がないから単純には比べられないけど、今の仕事には会社員時代よりも明らかに多くの時間を費やしているね。
ライター吉澤
毎日どういった生活を送っているのですか?
庄太郎さん
決まったスケジュールがないから答えるのが難しいけど、一つだけ例を挙げると、夏は自宅にいるときはほとんど徹夜。ゆっくり眠れるのは山中のテントのなかだけだね。
ライター吉澤
え、そんなに忙しいのですか?
ライターはこうやって原稿料を得ている
庄太郎さん
夏は一カ月のうちに22~23日も山取材の予定を入れているときもあって、そういう月に30~40ページ分の仕事も引き受けてしまったりすると、おのずと寝ずに原稿を書かないといけないんだよね。
ライター吉澤
よく体を壊しませんね…。
庄太郎さん
仲間のライターやカメラマンからもよく言われる(笑)。ランナーズハイに近い状況で、一種のワーカーホリックだよね。
ライター吉澤
ライター業の収入について、簡単に説明して頂けますか。
庄太郎さん
雑誌ならページ単価。まとまった企画で依頼が来て、それで1ページがいくらだから合計でこれだけの金額になるといった感じ。webはひとつの企画で単価が決まっていることが多いね。
フリーライターって本当は「フリー(自由)」じゃない?
ライター吉澤
フリーライターって自由に休んで悠々自適に生活しているイメージを持っている人が多いと思います。そんなに忙しいと好きなタイミングで休めないですか?
庄太郎さん
人それぞれだけど、僕は決めた日は何が何でも休むようにしている。どんなに良い条件の仕事がきても断念して、はじめに決めたスケジュールを優先するね。
ライター吉澤
それは、キャリアがある庄太郎さんだからできることなのでは?
庄太郎さん
フリーライターって収入が不安定だから、休日を返上しても仕事を引き受ける人も確かにいるんだ。でも、どうにかなる! くらいのスタンスでいないと体調を崩す前に心が疲れちゃう。フリーライターに必要な素質の一つは楽観主義であることだね(笑)。
ライター吉澤
毎年決まったバカンスがあるんですか?
庄太郎さん
春には、仲間内で「大人の早い夏休み」と称して南の島で長いキャンプ生活をしている。それから知床を含む北海道に数週間と、ユーコン川での出会いをキッカケにかわいがってもらうようになった野田知佑さんが住んでいる徳島県へ遊びに行くことが毎年の行事だね。