持ってるだけじゃ意味がない!ツェルトの立て方講座【基本&応用】

2019/05/14 更新

登山のとき、いざというシーンで生死を分けるかもしれないビバーク技術。 完璧に使えなくとも、ツェルトをある程度使えるかどうかで大きく結果は変わってきます。 有事の際、あなたは危機的状況を乗り越えられる知識と練習・経験を積んでいますか?


アイキャッチ画像撮影:三宅 雅也

「ツェルト」を正しく使うコツとは?

撮影:三宅 雅也
登山を始め徐々に慣れてくると、歩く距離がだんだん延びたり、より大きい山へと出掛けたり、ハイクの幅は徐々に広がっていくもの。 また、最初は経験者や友人らと連れ立って出掛けていたハイクも、時にはソロにもチャレンジしたりと自身の山の楽しみ方が広く深くなっていくのは楽しさだけでなく、充実感・達成感も伴うでしょう。

リスクに対する意識も芽生え、緊急用に【ツェルト】を準備したという方も多いのではないでしょうか?

”ツェルト本体”だけでは使うのが難しい?

撮影:三宅 雅也
ですが、ツェルト本体は単なる“幕”であり、中・上級者でない限り、現地・現場にあるものを活用した幕体の有効活用は困難です。
また、買ったは良いけどザックの中でお守りになっているという人や、購入初期に一度練習して覚えた気になっても、緊急使用目的の場合(もちろん使用する必要がないことが最善ですが)、 数ヶ月も経てばきれいさっぱり忘れてしまうでしょう。

ツェルト設営に必要なものは?

撮影:三宅 雅也
幕営には、 基本的に「トレッキングポール」「ペグ」「細引き」などが必要。
熟練度やハイクスタイルによっては、本体のみで現地現物を活用できる人、ザイルとシュリンゲを利用する人、単に身体に巻き付けるだけでOKな人などさまざまです。
(付帯アイテムは、選定するツェルトによって異なるため、各メーカー推奨を確認する必要があります)

活用シーンの想定が大切!

撮影:三宅 雅也
そもそもツェルトを活用するのはどんな状況があるでしょう?ULハイクやスピードハイクなど、ツェルトを簡易テント代わりに積極活用するケースも昨今では珍しくありません。

しかし、本来のシーンはやはり「緊急時」。 道迷いや日没、負傷、体調不良などなど、予期せぬリスクは数多くあります。 そのような有事の際、非常に大切なのが「ビバークすることを早く決断できること」ビバーク適地を探すのは明るいうちが好ましく、ツェルトを張るのに不安があるとその決断がなかなか付きません。 そのため、身体が覚えるまでは定期的に練習することが好ましいのです。

ビバーク適地とはどんな場所?

撮影:三宅 雅也
ツェルトを張る上で場所選びは非常に重要。吹きさらしの稜線や落雷・落石の恐れがある場所などは可能な限り避けましょう。
やはり風の影響を受けにくい樹林帯 (上からの落枝に注意) や灌木帯が好ましいですが、これらも明るい内に適地探しをすることでより安全性が高まります。

それでは早速、実際のツェルト設営の手順を見ていきましょう!

【基本編】ストック・ペグ・細引きを使った設営方法

撮影:三宅 雅也
まずは、地面からの冷気を避けるため、落ち葉などの緩衝材を敷き詰めます。 次にツェルトを取り出し、入り口ファスナーを閉めます。
撮影:三宅 雅也
その後、フロア部分となる四隅をペグダウン。
撮影:三宅 雅也
ある程度テンションを掛けながら長方形のフロアを作ることを意識しましょう。
撮影:三宅 雅也 (見やすいよう末端処理はしていません)
トレッキングポールの石突部分に細引きを通します。 結び目は、ダブルフィギュアエイトノット (二重8の字結び)でループを作っています。
撮影:三宅 雅也
これをトレッキングポール1本に対し、2本用意しセット。 細引きはあらかじめ自宅で結んだものを持っていくと現場での時短となりますし、ロープワークはすぐに忘れてしまうので事前準備が良いでしょう。
撮影:三宅 雅也
まずは片側の幕を起こしていきます。 トレッキングポール先端を本体の接続リングに挿入し、細引きにテンションを掛けていきます。 細引きの反対側は「自在結び」に。
撮影:三宅 雅也
尚、細引きの地面との固定は、今回は落ち枝を利用しました。 手頃な石があれば、石で固定も有効。 状況次第では割り箸などを活用するのも手段の一つです。
撮影:三宅 雅也
片側の細引きのテンションが掛けられたら、反対側も同様にペグダウンしテンションを掛けていきます。同様の工程を反対側でも。
撮影:三宅 雅也
ひとまず立ちました。
撮影:三宅 雅也
その後、均一にテンションを掛けるため、フロア部の4点の位置を微調整します。
撮影:三宅 雅也
内部を覗くと、まだフロアはこのような状態になっていますので、中に入りフロアを閉じていきます。
撮影:三宅 雅也
左右のフロアを紐で縛って完成!
最初は手間取るかもしれませんが、慣れればサッと設営できます。

【応用編】複数人で使う場合の設営方法

撮影:三宅 雅也
ツェルトはグループ/パーティーに一つではなく、地図同様、各自が一つ持参することが基本です。 理由は、持参していないアナタがはぐれてしまった時、地図同様そこにツェルトは無いからです。
万が一、ツェルト一つに対し、複数人がビバークする必要があるときは、応用の設営方法も覚えておくと良いでしょう。
撮影:三宅 雅也
まずはツェルトを半分折りの状態で広げます。 フォト上部が屋根部分です。
撮影:三宅 雅也
屋根側、フロア側の4点をテンションを掛けながらペグダウンします。
撮影:三宅 雅也
細引きと本体フロアの紐を締結。
撮影:三宅 雅也
細引きの反対側は、適当な高さで木の幹と結びます。
撮影:三宅 雅也
テンションを掛け両側を張っていくと、この様な形状に。
撮影:三宅 雅也
密閉空間ではありませんが、広々としたタープ状の空間が出来上がります。
撮影:三宅 雅也
この幕営形態では、最大4名が横になって休息をとることが可能。
木の幹への締結高さを変えることで上面の角度を変えられ、狭小空間化でき安心感を増すこともできますよ。

【緊急時】本体だけしか携行していない場合


撮影:三宅 雅也
ツェルトは、熟練度に応じた使い方があるというのは既述のとおりですが、まだビバーク初級者のアナタが不幸にしてペグや細引きを忘れてしまった場合…
撮影:三宅 雅也
最終的にはこれ、被ります!
もちろん、身体に巻きつけ横になり休息・睡眠を取ることもできます。雨風を少しでもしのぐことはとても重要です。

冷静に対処することが肝心

撮影:三宅 雅也
ビバークは、体力温存・回復に努めるため、極力身体を休めましょう。 また、寒さによる低体温化が非常に危険なので、寒さを感じる前に手持ちの防寒着はすべて着込み、可能であれば暖を取りましょう。また、低山・里山での道迷いなら、ヘビや蜂などに襲われるリスクもはらんでいますが、幕体1枚でそのリスクは大幅に軽減できます。

とにかく焦らずパニックにならず、落ち着いて対処することが肝要です。そのためにも、ツェルトを安心して張れる練習を行なっておくことが、危機的状況の回避に繋がります。 もちろん緊急幕営のお世話にならないことが最善ではありますが、「自分の身は自分で守る」が山の基本。安全な山行の一助になれば幸いです。皆さま、どうぞ良いハイクを!

撮影・文 三宅 雅也 (長野県自然保護レンジャー/山岳ライター)

【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山してください。
・登山靴、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。
・登山道は分岐も多くあるため地図・コンパス持参のほか、スマホGPS活用推奨。
・登山届提出は一部義務化されています。
・また、山岳保険への加入を忘れずに。


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三宅 雅也
三宅 雅也

長野県自然保護レンジャー、山岳ライター。 アルプスを中心に、トレランから厳冬期登山まで幅広く活動。 鷲羽-水晶-赤牛岳、槍ヶ岳~笠ヶ岳、荒川三山、中央アルプス主峰全山など、ロング日帰りのスピードハイクを得意とする。 また、キャンピングカーにて、登山と旅を掛け合わせた「外遊び人生漫遊術」を構築中。 スピードハイクの詳細はこちら! ウェブサイトはこちら

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