金子さん
それと気になるのが、雪山にチェーンスパイクのみ持ってきている人を見かけることですね。
編集部員 大迫
「雪(氷)の上を歩くもの」という、ざっくりとした認識をしているかもしれませんね。これは危ない。
金子さん
そのノリで北アルプスに行くと、チェーンスパイクでは太刀打ちできない硬い氷(アイスバーン)で滑ったり、柔らかい雪を短い爪で捉えきれずに滑ったりなどのリスクが増大します。
編集部員 大迫
アイゼン(クランポン)は必要ですね。
金子さん
そして、アイゼンもしっかり爪を研いでメンテナンスしておきましょう。研ぎ方がわからなければ、登山用品店に行って方法を聞くのがおすすめです。
編集部員 大迫
山に行ってから「あれ?刺さらない!」では、意味がないですからね。
教訓
装備は命を守るもの。しっかり違いや使い分けを理解しよう。使用前のチェックも忘れずに!
【2】余裕を持った登山計画を作ろう
装備の次は、登山ルートや登山計画についてです。
調べたルートは春山のルート?
金子さん
登山ルートを調べずに山に登る人はいないと思いますが、調べたルートが夏のルートなのか春のルートなのかも注意して欲しいポイントです。
編集部員 大迫
これは意外と忘れがちかもしれません。雪の有無でルートが変わりますからね。
金子さん
調べたルートが夏山なのであれば、雪のある状態のルートを必ず調べましょう。山岳情報は各県警のホームページで公開しているので、一度見てみてください。
編集部員S
天候などもそうですが、ルートの情報も最新のものを調べることを意識したいですね。
教訓
積雪の有無によってルートは変わります。時期にあったルート情報を確認しましょう。
登山計画にはしっかり予備日をもたせよう
金子さん
春の山とはいえ、天候によっては思わぬラッセル(雪をかき分けて進むこと)を強いられることもありますからね。稜線近くで丸一日暴風雪にあい、身動きが取れなくなることも考えられますよ。
編集部員 大迫
下山できなくなった場合、予備日がないと遭難とみなされて家族や仲間を心配させるかもしれません。
金子さん
予備日を持つことは、天候悪化しても無理な行動をする必要がなくなります。
編集部員 大迫
焦らず冷静な判断をするためにも、余裕が必要ということですね。
金子さん
燕岳から蝶ヶ岳への縦走をした時も、暴風雪で行動できないことがありました。予備日を設けていなかったら縦走できず帰ることになったり、無理に行動して遭難する可能性が高かったと思います。
教訓
春の北アルプスの天候は変わりやすい。悪天候でも、焦らなくてよいように計画には余裕を持たせましょう。
遭難は”ちょっとしたコト”が原因。装備も計画も抜かりなく
事故なく景色や山歩きを楽しむためのコツは、「しっかり準備」をすること。十分な装備、余裕を持った計画、そして万全の体調でゴールデンウィークの北アルプス登山を成功させてください。
時には安全第一で撤退も頭の中に入れておきましょう。
教えてくれた人
公益社団法人 東京都山岳連盟救助隊 隊長 金子 秀一氏
(取材時の肩書き、2021年3月に除隊)