ゴールデンウィークは北アルプスを満喫する絶好のチャンス!

連休があれば、北アルプスを十分に満喫できそうですよね。
北アルプスはまだまだ雪山?

街では春うららかな日も増えて過ごしやすくなってきていますが、そこは山と街。特に標高の高い北アルプスなどの山岳エリアはまだまだ残雪期で、例年多くの雪が見られます。
▼標高が高いエリアでは、まだまだ雪が残っている
▼気温が上がるので、全層雪崩などのリスクがある
▼天候が安定しにくく、急に荒れることも
冬の雪山とは異なる危険も潜んでいる、残雪期の北アルプス。ゴールデンウィークの北アルプス登山を安全に楽しむため、東京都山岳連盟救助隊 隊長の金子さん(取材時の肩書き、2021年3月に除隊)に、注意すべきポイントを聞いてきました。
金子さんのリアルな経験も交えながら、注意点を見ていきましょう。
【1】出発前に必要な装備を揃えてメンテナンスを

靴下、手袋、ウェアの着替えは必須!

金子さん
基本的なことですがウェア類、防寒着、特に靴下や手袋、ウェアの着替えは必ず持っていってください。
編集部員 大迫
寒い時期だと雪が中心ですが、気温が上がると雨で濡れるリスクも増えますね。
金子さん
ゴールデンウィークの北アルプスは、春の日射しを浴びることもあれば、厳しい冬の寒さを感じることもあります。天候悪化で雨や雪が降ったり、2日以上悪天候が続くこともあるんです。
編集部員 大迫
濡れたままだと、低体温症や凍傷の危険があるわけですね。
金子さん
私も雪洞で停滞した時に痛い目を見た経験があります。雨で濡れていたのですが、雪洞の中は湿度が高く、驚くほど衣類が乾かなかったんです。
編集部員 大迫
当時は着替えを持っていなかったんですか?
金子さん
軽量化と称してTシャツを1枚しか持っていませんでした。運良く天候が回復したことと、20代の馬力があったので大事にいたりませんでしたが、悪天候が続いた場合、低体温症になっていた可能性が高かったと思います。
教訓
雪と雨、そして内側からの濡れに注意!絶対に着替えは忘れず持っていくべし。
サングラスを持っていないと行動不能になるかも・・・

金子さん
やはりまだ雪山なので、日焼け止めとサングラスも忘れずに。
編集部員 大迫
日射しも強くなるので、雪の照り返しもすごそう。
金子さん
眩しいだけならいいんですけど、ひどい場合は水ぶくれができることもあります。強い紫外線により目の角膜や結膜に炎症が起こる雪目も怖いですね。症状がひどいと歩行ができなくなり、救助が必要になることもありますよ。
編集部員 大迫
ただの眩しさや日焼けでは済まないなんて、怖すぎる・・・。
金子さん
10代の頃の話ですが、ゴールデンウィークの涸沢をサングラスなしで半日行動していました。夜になるとゴロゴロとした異物感があったんです。
編集部員 大迫
たった半日でですか?
金子さん
夜中に何度も目をこすり朝を迎えましたが、目が開けられませんでした。そのため、1日停滞せざるを得なくなり、2日目になんとか行動ができるまで回復し、下山できたのが幸いです。
教訓
たかが日射しと侮るなかれ。サングラスや日焼け止めで確実に対策を。
チェーンスパイクとアイゼンは別物

金子さん
それと気になるのが、雪山にチェーンスパイクのみ持ってきている人を見かけることですね。
編集部員 大迫
「雪(氷)の上を歩くもの」という、ざっくりとした認識をしているかもしれませんね。これは危ない。
金子さん
そのノリで北アルプスに行くと、チェーンスパイクでは太刀打ちできない硬い氷(アイスバーン)で滑ったり、柔らかい雪を短い爪で捉えきれずに滑ったりなどのリスクが増大します。
編集部員 大迫
アイゼン(クランポン)は必要ですね。
金子さん
そして、アイゼンもしっかり爪を研いでメンテナンスしておきましょう。研ぎ方がわからなければ、登山用品店に行って方法を聞くのがおすすめです。
編集部員 大迫
山に行ってから「あれ?刺さらない!」では、意味がないですからね。
教訓
装備は命を守るもの。しっかり違いや使い分けを理解しよう。使用前のチェックも忘れずに!
【2】余裕を持った登山計画を作ろう

調べたルートは春山のルート?

金子さん
登山ルートを調べずに山に登る人はいないと思いますが、調べたルートが夏のルートなのか春のルートなのかも注意して欲しいポイントです。
編集部員 大迫
これは意外と忘れがちかもしれません。雪の有無でルートが変わりますからね。
金子さん
調べたルートが夏山なのであれば、雪のある状態のルートを必ず調べましょう。山岳情報は各県警のホームページで公開しているので、一度見てみてください。
編集部員S
天候などもそうですが、ルートの情報も最新のものを調べることを意識したいですね。
教訓
積雪の有無によってルートは変わります。時期にあったルート情報を確認しましょう。
登山計画にはしっかり予備日をもたせよう

金子さん
春の山とはいえ、天候によっては思わぬラッセル(雪をかき分けて進むこと)を強いられることもありますからね。稜線近くで丸一日暴風雪にあい、身動きが取れなくなることも考えられますよ。
編集部員 大迫
下山できなくなった場合、予備日がないと遭難とみなされて家族や仲間を心配させるかもしれません。
金子さん
予備日を持つことは、天候悪化しても無理な行動をする必要がなくなります。
編集部員 大迫
焦らず冷静な判断をするためにも、余裕が必要ということですね。
金子さん
燕岳から蝶ヶ岳への縦走をした時も、暴風雪で行動できないことがありました。予備日を設けていなかったら縦走できず帰ることになったり、無理に行動して遭難する可能性が高かったと思います。
教訓
春の北アルプスの天候は変わりやすい。悪天候でも、焦らなくてよいように計画には余裕を持たせましょう。
遭難は”ちょっとしたコト”が原因。装備も計画も抜かりなく

時には安全第一で撤退も頭の中に入れておきましょう。
教えてくれた人
公益社団法人 東京都山岳連盟救助隊 隊長 金子 秀一氏(取材時の肩書き、2021年3月に除隊)