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望月将吾さん

山は自分を知る場所――TJAR4連覇!山岳アスリート・望月将吾さんに聞く山への想いと今のキモチ

日本海からスタートし、北アルプス、中央アルプス、南アルプスを抜け、太平洋まで。その距離415㎞を1週間で走破するトランスジャパンアルプスレース。2年に一度開催されるそのレースで4連覇を果たし、2018年はすべての荷物を背負って進む『無補給』というテーマに挑んだ望月将悟さん。仕事では静岡市消防局で消防士・山岳救助隊員として働き、まさに山のスペシャリストである彼に、山への想いを語ってもらいました。

目次

アイキャッチ画像撮影:Nobumal

望月将悟は、山でできている

木の幹に座る望月将吾さん

撮影:Nobumal

望月さんは、プロフィールで肩書きを聞かれると困ってしまうことがあるという。

「トランスジャパンアルプスレース(以下TJAR)に参加したり、トレイルランニングのレースにも出ているけれど、トレイルランナーかと言われると違うよな・・・違和感があります。また今年のTJARに出るにあたって登山家の花谷泰広さんに『全部の荷物を背負ってチャレンジしてみたら? アルパインクライミングの世界と同じように』といわれて無補給にチャレンジしましたが、花谷さんのように登山家とかアルピニストでもありません。

TJAR中には応援してくれた年配のハイカーの方に、ハイカーの代表のように『よくぞやってくれた! 頑張ったな』と無補給を讃えてくれる声を掛けられました。それは、とてもうれしかったです」

滝と望月将吾さん

撮影:Nobumal

出身は南アルプスの登山口となる静岡市葵区井川。子供の頃から祖父や両親の仕事の手伝いで山に入っていたが、それは登山ではなく手伝いだったという。山で働く樵(きこり)や山里で暮らす人を時に山人(やまびと)と呼ぶことがあるが、山で育ち、山で遊び、山で働く望月さんは、生粋の山人だと思える。こんなことを話してもいた。

「山は、僕にとって遊び場であり、学び場なんです。山でいろいろなことを感じて、時にリフレッシュして、経験したことが山岳救助隊員としてそのまま活かせ、社会に役立てることができる。体力だって山を登ったり、走ったりすることで、ついたものです」

つまり、望月将悟は山でできている。だから、山を好きな人の多くから愛される。強さに憧れを持たれる。やさしさに魅了される。山、そのもののような人なのだ。

応援は、前進を後押ししてくれるありがたいチカラ

年配女性と望月将吾さん

撮影:PONCHO

「あれ、どこかで見た顔だと思ったら、将悟さん。よくまぁ、こんな細い体であんな荷物を背負って走れるね~エラいね~」

インタビューは、TJARのゴール地点の静岡市・大浜海岸で行った。そこで出会った年配女性は、ニコニコ笑顔で息子や孫を見る目で、望月さんに声を掛けてきた。すると望月さんは
「いつもゴール地点で待っていてくれてありがとうねぇ。お婆ちゃんの顔を見ると帰ってきたなぁって、元気が出るよ」
と応じた。応援は力に変わる。掛けられた声はもちろん、見ていてくれるだけ、待っていてくれるだけでも、その一瞬の出会いがパワーに変わる経験を、何度となくしているという。

休憩する望月将吾さん

撮影:Nobumal

「仕事柄というのもありますが、山ではたくさんの人と話をする機会があります。そこで僕が背負っている軽くて小さな荷物を見ると、年配のハイカーさんたちは、若くて体力があるからできるんだと教えられました。彼らは体力に劣るため、山を歩く時間が長く掛かります。だから一泊分の荷物が必要になり、重量が増える。ゆっくりゆっくり歩いている彼らの脇を、一生懸命になっているのはわかりますが、挨拶もせず、駆け抜けていくトレイルランナーがたまにいます。挨拶だけでも交わしたその言葉が生み出す力に、気が付いてほしいです」

強さは得意になったり、見せつけるものではない。やさしさに変換して贈るものなのだろう。その強さを山から頂いたものだったとしたら、同じ山を好きな人に贈らない理由はない。望月さんは、そう考えているように思える。それは弱さを自覚していることからもうかがえる。

弱さの自覚。それがケガや事故に遭う確率を減らす

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