暑寒別岳

暑寒別岳|一面のお花畑や広大な湿原…魅力の異なる3つのコースを紹介

暑寒別天売焼尻国定公園内に聳える増毛山地の主峰・暑寒別岳。100ヘクタールもの広大な湿原が広がる”北海道の尾瀬”や、固有種のマシケゲンゲをはじめたくさんの高山植物など、多くの自然が残る日本二百名山の一つです。代表的な3つのコースはどれも違った魅力を持つコースなので、何度でも楽しめる山。今回はそんな暑寒別岳のみどころや3つのコース詳細、さらに登る際の注意事項まで、暑寒別岳の魅力に迫ります。

目次

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、山小屋営業ならびに交通状況などに変更が生じている可能性があります。
山小屋や行政・関連機関が発信する最新情報を入手したうえで登山計画を立て、安全登山をしましょう。
アイキャッチ画像出典:PIXTA

暑寒別岳(しょかんべつだけ)とはどんな山?

南暑寒岳から見る暑寒別岳

出典:PIXTA
標高(東山ピーク)山頂所在地山域最高気温(6月-8月)最低気温(6月-8月)
1,492m北海道増毛郡増毛町
雨竜郡雨竜町・北竜町
樺戸郡新十津川町
増毛山地15.5℃2.4℃
参考:ヤマレコ

石狩平野の北に位置する増毛山地の主峰、暑寒別岳。二百名山にも認定されているこの山は、「滝が上にある川」を意味するアイヌ語が由来とされています。二百名山や北海道百名山の他にも「花の名山」として有名で、本州の標高2,500m付近の高山植物が、標高1,000m程度から広がっているのが特徴。登りながら多くの高山植物を楽しめる人気の山です。山頂までの登山ルートは3つありますが、暑寒別岳周辺は豪雪地帯のため、7月中旬まで各所に雪渓が残っているので注意が必要。

固有種をはじめ、一面に広がるお花畑

マシケゲンゲ

提供:ヤマレコ/ktuokkahb(マシケゲンゲ)

暑寒別岳の高山植物は、6月中旬から咲き始め、8月上旬には見頃のピークを迎えます。約100種類の花が咲き誇る山には、紫色をしたマシケゲンゲなどとても貴重な固有種の姿も。他にもエゾノハクサンイチゲやエゾツツジなど、かわいらしい花々が一面に広がる光景は、多くの登山者を魅了しています。

北海道の尾瀬”雨竜沼(うりゅうぬま)湿原”

雨竜沼湿原

出典:PIXTA

暑寒別岳のコースの途中には、”北海道の尾瀬”とも呼ばれる、雨竜沼湿原が広がっています。四季によって表情を変化させる日本屈指の高層湿原は、標高900m付近の地点にあり秘境感ある神秘的な湿原。長年、ミズゴケやスゲ類が堆積してできたこの泥炭地には、「池塘(ちとう)」といわれる沼が700個以上存在しており、暑寒別岳の雄大な自然景観をつくりあげています。

地図も必ずチェック!山と高原地図 ニセコ・羊蹄山 暑寒別岳

登山地図の定番といえばコレ!マップ詳細はもちろん、バスやマイカーでのアクセスにも便利!

昭文社 山と高原地図 ニセコ・羊蹄山

暑寒別岳の天気は?

暑寒別岳に行く前に現地の天気をこちらでCHECK!
てんきとくらす(暑寒別岳の週間天気)

暑寒別岳に登る際の注意事項

暑寒別岳にアタックする際は、ヒグマ対策など北海道ならではの山対策が必要。事前に必ず情報をチェックして対策をとりましょう。

ヒグマに注意!熊対策は大丈夫?

ヒグマ

出典:PIXTA

暑寒別岳周辺では、多数のヒグマが目撃されています。春先の4月~5月末は冬眠明けのヒグマが活発なため、特に注意!出発前には出没情報をチェックし、必ず対策を行うようにしましょう。
ヒグマの出没情報

▼熊対策はこちらの記事もチェック!

ブヨ・蚊・ブヨ対策も忘れずに!

虫よけスプレーをする男性

出典:PIXTA

6~8月にかけて蚊やブヨなどが大発生することが多い暑寒別岳。登山中はもちろんのこと、駐車場からブヨや蚊がいるため、できるだけ肌を出さない格好がおすすめ!さらに虫よけスプレーなどの対策をしっかり行いましょう。

▼人気の虫よけスプレーをチェック!

山中にトイレはありません!

携帯トイレ

出典:Amazon

暑寒別岳ではどのコースにも登山道中にトイレがありません。携帯用トイレを必ず持参するようにしましょう。携帯用トイレのブースもないので、女性の方はポンチョもあると便利です!

▼一つあると安心!携帯トイレについて知りたい方はコチラ

【一面のお花畑が広がる】増毛町・箸別ルート

暑寒別岳はどのコースも距離が長いため、早朝出発がおすすめです。まずはきれいなお花畑が一面に広がる増毛町・箸別コースから紹介します。登山道は分かりやすく、難所も特にありませんが、ヒグマ対策はきっちりと行っていきましょう。

合計距離: 17.89 km
最高点の標高: 1469 m
最低点の標高: 485 m
累積標高(上り): 1436 m
累積標高(下り): -1436 m

【体力レベル】★★★★☆
日帰り
コースタイム:9時間
参考:ヤマプラ
【技術的難易度】★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例はこちらをクリック:グレーディング表

箸別避難小屋(80分)→二合目(80分)→四合目(90分)→八合目(60分)→山頂(50分)→八合目(60分)→四合目(60分)→二合目(60分)→箸別避難小屋
箸別避難小屋

スタート地点となる箸別避難小屋はトイレ完備。登山口付近には入山ポストやルート看板も設置されています。

二合目画像

登山口からしばらくはなだらかな登り坂。ほとんど登っている感覚がありません。七合目までは眺望もなく、樹林帯の単調な道が続きます。歩きやすい道ですが、虫が多いので注意しましょう。

7合目以降の稜線画像

緑の生い茂った登山道を抜け七合目稜線まで来ると、視界が一気に開けて青空に。目の前には日本海が広がり、エゾノホソバトリカブトやイワイチョウなど、様々な高山植物の姿を楽しむことができます。時季によっては雪渓が残っていることもあるので、事前に確認しましょう。
重なる岩

八合目から先もお花畑が続きます。一部急登もありますが、基本的にはゆるやかな登り坂。ゆっくり稜線散歩を楽しましょう。石を積み上げたような大岩は、登山者に元気を与える山頂前のポイント。山頂まではあと少しです!

山頂からの眺望

暑寒別ルートの分岐、大岩を超えると、ついに山頂に到着。山頂にも一面お花畑が広がっています。南暑寒岳や雨竜沼湿原が見渡せるなど、展望は抜群!下山は同じコースを下りますが、暑寒沢ルートとの分岐が少しわかりにくいため注意しましょう。

箸別避難小屋

箸別避難小屋

箸別避難小屋は赤い屋根が特徴の2階建ての建物で、約15名の収容が可能。トイレの利用ができるため、出発準備に利用する登山者が多い避難小屋です。

箸別避難小屋へのアクセス

【車でのアクセス】
国道231号→JR跨線橋横の道路→箸別ルートの看板右折→3.5キロほど走り左折→箸別避難小屋

【駐車場情報】
住所:北海道増毛郡増毛町湯の沢1962
駐車台数:30台
料金:無料

【岩場やロープ場に挑戦】増毛町・暑寒沢ルート

暑寒沢ルートは、マシケゲンゲなどの固有植物や扇風岩など見どころも豊富ですが、ロープ箇所が存在する登山道。アブなどの虫も多いので、しっかりと対策してから挑みましょう!

合計距離: 17.11 km
最高点の標高: 1469 m
最低点の標高: 295 m
累積標高(上り): 1906 m
累積標高(下り): -1906 m

【体力レベル】★★★★☆
日帰り
コースタイム:9時間25分
参考:ヤマプラ
【技術的難易度】★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例はこちらをクリック:グレーディング表

暑寒荘(70分)→佐上台(125分)→六合目(50分)→扇風岩・八合目(80分)→山頂(60分)→扇風岩・八合目(40分)→六合目(90分)→佐上台(50分)→暑寒荘

暑寒荘

暑寒沢ルートの登山口は暑寒荘の近くにあり、駐車場もわりと広め。登山ポストにはパンフレットも設置されているので必要な方はもらっておくといいですよ。

登山道

暑寒沢ルートは基本的に樹林帯の登山道。展望は望めませんが、クルマユリやシロバナ二ガナなどの花々を道中に楽しむことができます。雨が降ると一気に湿度が高くなるので、適宜レイヤリングで温度調節を。
山頂直前のロープ

六合目に差しかかると勾配のキツいロープ場が登場します。見晴らしのいい滝見台と扇風岩を通過した後、九合目からは再び急登のロープ場。中には浮き石もあるので、落石や踏み外しには十分に気をつけましょう。
山頂までの登山道

ロープ場を抜けた後は、山頂までのんびり。視界が開けて青い空と白い雲に囲まれた、北海道らしい雄大な景色の中を歩いて行くことになります。見晴らしのいい稜線は気分爽快!

山頂の画像

しばらく進んでいくと箸別ルートと合流します。そこから大岩を越えたら、ついに山頂へ到着です。今まで歩いてきた稜線の景色も最高!

暑寒小屋

暑寒荘

暑寒ルートの拠点となる暑寒荘は、駐車場からほど近い場所にある3階建てのレトロな木造の建物。管理人は日中のみ常駐しています。
料金:無料
営業期間:冬季以外(ただし、冬山登山の緊急時には利用可能。下山後は役場に報告が必要)
住所:北海道増毛郡増毛町暑寒沢830

暑寒小屋へのアクセス

国道231号→道道暑寒別公園線→果樹園を道なり→砂砂利道→暑寒小屋
【駐車場情報】
駐車台数:30台
料金:無料

【”北海道の尾瀬”ならココ】雨竜町・雨竜ルート

多くの登山者を魅了して止まない、癒しのエリア「雨竜沼湿原」を満喫できるルート。暑寒別岳にある3コースの中で、最も体力を要求されるといわれています。健脚者向けのロングコースは、前泊し早朝出発がおすすめです。

合計距離: 26.74 km
最高点の標高: 1474 m
最低点の標高: 540 m
累積標高(上り): 2380 m
累積標高(下り): -2380 m

【体力レベル】★★★★★
日帰り
コースタイム:13時間35分
参考:ヤマプラ
【技術的難易度】★★★★☆
・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
凡例はこちらをクリック:グレーディング表

南暑寒荘(100分)→雨竜沼湿原入り口・三合目(50分)→展望台(145分)→南暑寒別岳(50分)→最低コル(90分)→山頂(70分)→最低コル(60分)→南暑寒別岳(90分)→展望台(50分)→雨竜沼湿原入り口・三合目(80分)→南暑寒荘

雨竜ルート登山口

雨竜ゲートパーク内からスタートする雨竜ルート。パーク内には前泊におすすめの南暑寒荘や駐車場があります。登山届けは管理棟で提出しますが、環境美化料金として別途500円の支払いが必要。
第二の吊り橋

登山口から10分ほど歩くと第一の吊り橋に到着します。吊り橋を越え、20分ほど歩くと”白竜の滝”へ続く道との分岐点に。どちらへ進んでも第二の吊り橋手前で合流するので、気分に合わせて進みましょう。吊り橋を越え沢沿いを登っていくと雨竜沼湿原が見えてきます。
雨竜沼湿原の木道

出典:PIXTA

日本有数の山岳高層湿原エリアである「雨竜沼湿原」はまるで別世界。スッと伸びた木道の脇には、エゾカンゾウやチングルマをはじめとするお花畑や池塘が広がり、暑寒別岳の姿も見る事ができます。
南暑寒別岳から見る暑寒別岳

出典:PIXTA

一通り湿原の景色を楽しんだ後は、南暑寒岳の登山道へと入って行きます。展望台を通過すると、遠くに南暑寒岳の姿が。ここから約2時間半ほどで南暑寒別岳へ到着です。南暑寒岳からは暑寒別岳をはじめ、群別岳、黄金山など近隣の山々を見渡すことができます。

暑寒別岳の断崖絶壁

出典:PIXTA

南暑寒岳からのルートは、体力を要する登山道。暑寒別岳へは最低コルまで一度下り、そこから今度は約400mほど登っていきます。山頂直下にある崩落地は右側を巻いて登っていきますが、崩れそうな場所もあるため要注意!最後まで気を抜かずに登り切りましょう!下りはやはり南暑寒別岳への直登が崩れやすく危険。心配な方は別のコースで下山しましょう。

南暑寒荘(雨竜沼湿原ゲートパーク内)

南暑寒荘

雨竜沼湿原ゲートパーク内にある小屋は、宿泊が可能。約8畳の相部屋で寝具や食料はありませんが、給湯室が設置されています。トイレは和式の水洗です。
料金:一人1,000円(宿泊)、500円(入山協力金)
営業期間:6月中旬~10月初旬(登山道開通期間)
住所:北海道雨竜郡雨竜町
電話番号:0125-77-2248(産業建設課 商工担当)

●キャンプ場
料金:1張9人まで700円、10人以上1,000円
営業期間:6月中旬~10月初旬(登山道開通期間)
住所:北海道雨竜郡雨竜町
電話番号:0125-77-2248(産業建設課 商工担当)

南暑寒荘へのアクセス

道央自動車道滝川IC→国道38号→新十津川方面→国道275号→道道432号→暑寒ダム→雨竜沼湿原登山口(ゲートパーク)

【駐車場情報】
住所:北海道雨竜郡雨竜町
電話番号:0125-77-2214(産業建設課 林業担当)
駐車台数:150台
料金:無料

美しい世界!暑寒別岳で雄大な湿原とお花畑を楽しんで!

 暑寒別岳雨竜沼コースから見る湿原

出典:PIXTA

北海道らしい美しい景観が広がる暑寒別岳は、カラフルな花々が楽しめる山岳。大小100を超える雨竜沼湿原の池塘など見どころも多いため、隠れた名所となっています。ぜひ一度、北海道の複雑な自然景観に触れてみてはいかがでしょうか?

【登山時の注意点】

・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。(足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。)
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます