山にゴミ箱はありません
飲み終わったペットボトルを捨てようにも、そういえば先ほどからごみ箱が見当たらない。山の中では、きちんと登山道が整備されていても、街中の公園のようにゴミ箱は存在しません。登山初心者の中には、意外と知らない人も多いのではないでしょうか。
車両用の道路が整備されていない山では、定期的な清掃やごみの回収を行うことができません。登山道や山小屋などで発生したごみを処分するには、ヘリコプターや人力で運搬するほかなく、これには膨大な費用や労力がかかります。こうした負担を可能な限り減らすためにも、山の中ではごみを捨てない、それが登山者のマナーです。
持ち帰る、ってどこまで?
ズバリ「家」まで。これが山での鉄則です。 先ほどの人件費・輸送費がかかるという点から、山小屋に捨てるのも基本NG。ただし、山小屋で買ったものであれば、ごみを回収してくれる所も多いようです。登山中に自分で出したごみはNG。 コンビニで買ったものなど、山へ持ち込んで出たゴミは基本すべて家まで持ち帰りましょう。
山もゴミ箱じゃありません!
そうは言っても、現実はなかなかそうもいきません。写真は、実際に山で見かけた登山者が残したごみ。心無い一部の人々は「飴の袋みたいに小さいものなら目立たないし平気じゃない?」「山っていったら野外だし、誰も見てないし別によくない?」とでも思っているのでしょうか。
ごみだらけの山へ行きたいですか?
登山者が山に少しずつでもごみを捨てるようになったら、塵も積もれば山となり登山道や山頂はあっという間にごみで一杯になってしまいます。ごみは外から持ち込まれ、本来そこになかったもの。植生や自然環境に確実に影響を及ぼします。そうなってしまったら、山の所有者(または管理者)がその山へ入れないように規制を行うかもしれません。
何よりもそんなごみだらけの山へ、せっかくの休日を使って行きたいと思うでしょうか?
「ちょっとぐらいいいや」は、最終的に登山ができなくなってしまう可能性を秘めていることを、今一度肝に銘じておきましょう。
【登山の準備】食べ物のごみを減らすテクニック
では、なるべくごみを出さないよう持ち物に工夫を凝らすことが私たちのやるべきこと。余分な持ち物を減らせば、ごみの発生量もその分減りますし、荷物の軽量化にも繋がります。ここでは、食料品のごみ減量テクニックを紹介します。
包装をできるだけ解く!
最近のお菓子は外袋の中に個別包装してあったりと、何かとごみがでやすいパッケージになっています。これら包装を解いて1つの容器・または袋にまとめるとごみの減量につながります。
写真のような個包装も、なるべく家で剥いてひとまとめにしましょう。ジップロックなどのチャック付きポリ袋が便利です。
山ごはんの材料もとにかく小分けにする!
山ごはんに使う食材は、事前に使う大きさにカットしておくと便利です。野菜の皮などの無駄なごみが出ない他、調理の時間短縮にもなります。
お湯を注いで食べられるものも、ジップロックに入れて持ち運べばコンパクト&ごみ減量。
うどんやラーメンなどの麺類を調理する場合には、事前に調味したスープや汁をボトル容器に入れて用意しておきましょう。スープが余っても捨てることなく容器に戻して持ち帰れます。
食材を冷凍して、生ものなど傷みやすいものと一緒にしておけば、保冷剤を代用することができます。肉などの場合は、ラップを掛けた状態で冷凍すればOK。いくつも保冷剤をもっていくと邪魔になりますが、これならごみもラップ1枚と少なく軽量です。
【登山中】ごみを集める場所を決めておく
ごみが発生したらすぐに片づける。そうした心構えとともに、“どこにごみを集約させるか”を決めておくと便利です。
ゴミを入れるものを常に手の届くところに!
ゴミ袋をザックの奥底にしまっていては、集めるのが大変。ズボンのポケットやザックの外付けポケットなど、あちらこちらにごみがとっ散らかってしまいます。「とりあえずいったん全部サコッシュに入れる!」「ザックのサイドポケットに入れる!」など集める場所をあらかじめ決めておきましょう。
また、サッと取り出せるコンパクトなごみ袋を持ち歩くのも有効。この商品を手の届きやすいところに繋げておけば、仲間にもすぐ分けてあげられます。
山ごはんのゆで汁、残ったスープも捨てちゃダメ
前の項目でも説明しましたが、食材類は、ゆで汁やスープの飲み残しなどの液体であっても、山に廃棄するのはNGです。飲み切るのが難しい場合はそもそものスープを少な目にしたり、ボトル容器があれば行きは食材入れ、帰りはごみ入れとして活用することができます。
【下山前】ごみはなるべく小さく!
かさばるごみをそのままにしておくと、ザック中がごみで一杯になりかねません。ここでは山で出たごみをコンパクトにまとめる方法やアイテムをご紹介します。
ゴミはなるべく小さくまとめる!
例えば、食べ終わった後のコッヘル。山では水が貴重なため、洗うことができません。ティッシュ(ウェットタイプを含む)を使って拭くのが一般的ですが、ここでもこうしたごみが発生してしまいます。
そんな時はお菓子の袋を捨てずに取っておいて、行動中に出たごみと一緒にひとまとめにしてしまいましょう。輪ゴムでくるくると留めるとコンパクトになります。ごみをまとめる用にチャック付きのポリ袋を別に持っていくのも有効です。
こんなお助けアイテムも!
山で出たごみを収納し、持ち帰るためのバッグです。ザックに外付けできるので、下山時は荷物が減りパッキングがしやすくなるという嬉しい効果も。匂いや水分が漏れにくい構造となっており、容量も4リットルと十分な収納力を備えています。
モンベル O.D.ガベッジバッグ4L
<スペック>
ごみをまとめるのは、多少面倒ではありますが、ここは丁寧にやっておきたい所です。ザック内にごみの水分が漏れ出し、他の荷物を汚してしまったなんて避けたいですよね。慣れればごみのコンパクト化もスピーディに行えますし、ごみのまとめもパッキングの大切な要素。きっちりまとめられたら、登山の想い出と一緒に自宅まで持ち帰りましょう。
いつまでも綺麗な山に登りたい
現在多くの山で麓から頂上までごみを目にすることなく登山を楽しむことができます。それは山の管理者や山小屋のスタッフの努力もあるでしょうが、登山者一人一人の『ごみを絶対に捨てない』という意識が実を結んでいるのはないでしょうか。引き続き「ごみが出たら家へ持ち帰る」この鉄則をみんなが守れば、これからも綺麗な山を楽しむことができるでしょう。