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「極悪非道」な山小屋が「きれいでおいしい」人気スポットになったワケ/南八ヶ岳・赤岳鉱泉(4ページ目)

マムート土留作業中

提供:赤岳鉱泉(1年に1回は行われる登山道整備。根底にはやはり「安全に山を楽しんでほしい」という思いがある)

―――なるほど。あの階段があることで、相当歩きやすくなってますよね。しかもかわいい!

そうですね。でも、ただ「歩きやすい」だけじゃないんですよ。あの階段、正式には「土留め」って言うんです。「土を留める」と書いて字のごとく、両サイドなり上から流れてくる土や砂利を留める……。八ヶ岳の地質は比較的弱いので、雨風や雪なんかで斜面が掘れたり削れたりするんですね。そうすると、特にアイゼンを履かない夏場なんかは、滑ったり転倒したりしやすい。

そこに土留めを作って斜面の崩れを食い止めることによって、同時に階段にもなる。歩きやすさと同時に登山道の崩壊も食い止めるという、2つの役割があるんです。

最後に、“秘密にしておきたいとっておきの景色”を教えて!

赤岳鉱泉受付

撮影:おくたまこ(受付の太貴さん。登山者を笑顔で出迎えてくれる)

―――最後に、通年ここにいるからこそのとっておきの景色があれば教えてください!

文三郎尾根のちょうど中間くらいから見る南八ヶ岳の山々、ですかね。赤岳ピークからの景色ももちろん素晴らしいけれど、そこからは全部見えるんです。赤岳の西壁とか、阿弥陀とか、横岳とか硫黄岳とか……。真下から見る赤岳の迫力もすごい。

文三郎尾根の中間あたり

撮影:おくたまこ(ちょうどこのあたりが太貴さんのお勧めするベストビュースポット。冬の赤岳を登るなら、ぜひチェックしてみては?)

―――へぇ〜、全部見えるんですか! さぞ綺麗なんでしょうね…。

それは、もう! 12月の頭にその場所で作業をしていて、偶然目にしたんです。多分16時半頃に「さあ帰ろうかな」と思ってふと顔を上げたら、西日が当たって山全体が真っ赤に染まっていて。その様子が本当にきれいで。ああ、すげえなって、思わず見とれました。
八ヶ岳は四季を通じていいところですが、個人的には冬の方が好きです。寒いし、生活するには厳しいけれど、だからこそ山も凛とするというか。

【あとがき】
小屋から見えた赤岳の様子

撮影:YAMA HACK編集部(小屋から見えた赤岳のようす)

台風による倒壊、移転・再建のお話に、「極悪非道」と言われた時代の様子、そして現在の赤岳鉱泉を代表する名物・サービスの裏話……。どのエピソードも大変興味深く拝聴させていただきました。なかでも印象的だったのは、「訪れる人に、山をより安全に楽しんでもらいたい」と話す、太貴さんのまっすぐな眼差し。と、先代の不良話(笑)。「サービス」と「安全登山」の精神で、これからもますます多くの人に愛されるのだろうなあと確信した取材でした。

※この記事内の情報は特記がない限り公開初出時のものとなります。登山道の状況や交通アクセス、駐車場ならびに関連施設などの情報に関しては、最新情報をご確認のうえお出かけください。

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