新型コロナウイルス感染拡大防止のため、山小屋営業ならびに交通状況などに変更が生じている可能性があります。 山小屋や行政・関連機関が発信する最新情報を入手したうえで登山計画を立て、安全登山をしましょう。
アイキャッチ画像撮影:YAMAHACK編集部
“知床半島”に佇む『羅臼岳』の魅力とは?

標高 | 山頂所在地 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
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1,660m | 北海道目梨郡羅臼町・斜里郡斜里町 | 12℃ | -0.2℃ |
羅臼岳は知床半島のほぼ中央にある火山群の主峰、かつ最高峰。この山域を含む知床半島全体が
世界遺産に登録されている自然の宝庫です。名前の由来は、アイヌ語の「ラウシ(獣の骨のある所)」から来ており、古くは”良牛岳”やアイヌ語で”チャチャヌプリ”と記されたこともあります。
夏が短い羅臼岳

羅臼岳の本格的な登山シーズンは、7月上旬~9月中旬。緯度が高いため夏が短く、雪に覆われる時期が長い山です。しかし7月は残雪が多く、9月中旬になると雪が降ることもあり、初心者だけでの山行はルートが分かりにくく注意が必要!

羅臼岳で夏山と言えるのは7月中旬~8月いっぱいまでですが、雪の多い年は8月上旬まで雪渓歩きを楽しむことができます。雪の白と山の緑、空の青に色とりどりの花…様々な色を楽しめるのも魅力!
高山植物の宝庫!花の百名山・新花の百名山にも選ばれた羅臼岳

多くの花が咲き乱れる羅臼岳は高山植物の宝庫!エゾコザクラやエゾツツジのピンク色の絨毯、チングルマやイワギキョウなど、登山中にたくさんの花と出会うことができます。
知床半島やオホーツク海、北方領土まで一望できる山頂

撮影:YAMAHACK編集部(写真右側が太平洋側、左側がオホーツク海側)
羅臼岳山頂は見晴らしが良く、360度の絶景が!北東側には知床半島の細長い姿、さらに知床連山の連なる姿を見ることが出来ます。天気が良い日は、遠く千島列島の姿も!
また、知床連山をはさんで、太平洋側とオホーツク海側の景色を一望できるのも魅力!太平洋側とオホーツク海側では気候が異なるため、見た目ではっきりわかるくらい違った景色を見ることができます。
下から望む羅臼岳も壮大!

撮影:YAMAHACK編集部
羅臼岳は
「知床富士」とも呼ばれる美しい山。登山途中にある羅臼平からは、きれいな裾野が広がる羅臼岳の姿を見ることができます。

撮影:YAMAHACK編集部
羅臼平から見る姿とは一転、山頂周辺は火山帯らしいごつごつとした男らしい姿に変わります。
地図も必ずチェック!山と高原地図 利尻・羅臼 知床・斜里・阿寒
登山地図の定番といえばコレ!マップ詳細はもちろん、バスやマイカーでのアクセスにも便利!
ITEM
山と高原地図 利尻・羅臼 知床・斜里・阿寒
発行元:昭文社
羅臼岳の天気は?
羅臼岳に行く前に現地の天気をこちらでCHECK!
てんきとくらす(羅臼岳の週間天気)羅臼岳に登る前に確認しておきたい注意事項!

撮影:YAMAHACK編集部
手つかずの自然が多く残る羅臼岳。だからこそ、登山するときに気を付けておきたい注意事項がいくつかあります。必ず事前にチェックして快適な登山を楽しみましょう。
目撃情報多数!ヒグマに注意

撮影:YAMAHACK編集部
羅臼岳ではヒグマの目撃情報が多数出ています。熊対策は必ず行いましょう!羅臼ビジターセンター、知床自然センターなどで、
クマ撃退スプレー(約1,000円/日)のレンタルが可能。また、必ず事前に使い方の確認をしておきましょう。
ヒグマを正しく知ろうテントで宿泊する際は、必ずフードロッカーの使用を!

撮影:YAMAHACK編集部
今回は日帰りでのコース紹介をしますが、羅臼岳には山小屋・避難小屋がないため、縦走などで宿泊をする際はテント泊となります。食料や調理をした食器・ごみの匂いはヒグマを誘因する可能性があるため、必ずテントから離れた場所で調理し、食料は
フードロッカーに入れてから就寝しましょう。フードロッカーは、羅臼平・三ッ峰・二ッ池・第一火口の野営地に設置されています。
また、ビジターセンターでは
フードコンテナ(約1,000円/日)のレンタルも可能!クマ撃退スプレーと一緒にレンタルするのもおすすめです。
必ず携帯トイレの準備を!

羅臼岳には山小屋がなく、さらに登山道にはトイレがありません。岩尾別コースにのみ
携帯トイレブースがありますが、通常のトイレではなく携帯トイレを使用する為の小屋なので、必ず携帯トイレを持参してください。
羅臼岳のトイレ事情羅臼岳の夏は短い!必ずアイゼンの確認を!

撮影:YAMAHACK編集部
通常登山シーズンと言われる7月でも羅臼岳では残雪が多く、9月中旬からは早くも雪が降り始めます。急登も多いので、アイゼンが必要かどうか必ず事前に確認をしましょう。
水場の水は必ず煮沸してから利用して!

羅臼岳にはキタキツネが生息しており、
エキノコックスに感染する可能性があります。必要な量の水を担いで登るか、煮沸する道具を持って登りましょう。(判断が難しい時は全て煮沸してから使用するのをおすすめします。)
【初~中級者向け】お花畑や知床の景色を堪能できる岩尾別コース
羅臼岳の登山コースの中では、登山道が比較的整備されており、トイレブースもある一般的な登山道。樹林帯の木々や高山植物、雪渓など知床の様々な自然を見ながら登ることが出来るコースです。
※羅臼岳は常時観察活火山です。活火山である事に留意して登山をしてください。最新情報は必ず確認お願いします。 気象庁 噴火警報・予報 合計距離: 15.05 km
最高点の標高: 1613 m
最低点の標高: 232 m
累積標高(上り): 2668 m
累積標高(下り): -2668 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 日帰り
- コースタイム:8時間20分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
岩尾別温泉(110分)→弥三吉水(60分)→銀冷水(65分)→羅臼平(60分)→羅臼岳(45分)→羅臼平(50分)→銀冷水(40分)→弥三吉水(70分)→岩尾別温泉 
登山口となる岩尾別温泉には、ホテルと木下小屋があります。木下小屋は寝具提供のない素泊まりのみの営業ですが、温泉に入ることが可能!

撮影:YAMAHACK編集部
スタートして少し歩くとヒグマ注意の看板が。ここから「650m岩峰」まではヒグマが頻繁に目撃されている場所なので、声を出したり鈴を鳴らしながら歩きましょう!

撮影:YAMAHACK編集部
樹林帯の緩やかな坂道を登り、最初の水場・弥三吉水、さらに坂を進んでいくと極楽平に到着。極楽平からはこれから目指す羅臼岳山頂の姿をとらえることができます。

平たんな極楽平を過ぎると徐々に傾斜が増してゆき、ジグザグの急坂に。弥三吉水から60分ほどで銀冷水に到着します。普段はほとんど枯れていますが、雪融けの季節は水が流れていることも。

銀冷水には携帯トイレブースが設置されています。使用済の携帯トイレは、家に持ち帰るか登山口にある回収箱へ捨てましょう!

撮影:YAMAHACK編集部
大沢入口からは高い木がなくなり、景色も開けてきます。岩場や急登が続き、さらに夏まで雪渓が残るため、アイゼンが必要なことも。事前に確認しましょう!

撮影:YAMAHACK編集部
大沢を登りきり羅臼平に出ると、目の前にはドーンと羅臼岳の姿が!ここからハイマツ帯を羅臼岳に向かって進みます。山頂直下には最後の水場・岩清水がありますが、枯れていることも。

撮影:YAMAHACK編集部
ここから山頂までは岩登りが始まります。岩についたペイントを頼りに登りましょう!大きな岩場が続く急登を登り切れば、いよいよ山頂です。

羅臼岳の山頂は火山帯らしい大きな安山岩がごろごろしています。そこから見る眺めはまさに絶景!三ツ峰、知円別岳、硫黄山と知床連山の山々が連なる様は雄大で、さらには羅臼港や国後島など海の向こうまで景色が広がっています。
帰りは同じ道を通って帰りますが、山頂から下る岩場はとくに気を付けて下りてください。
岩尾別登山口へのアクセス方法はこちら
【札幌から】
●車の場合
札幌IC(道央自動車道・旭川紋別自動車道)―遠軽瀬戸瀬IC―道道493号―国道333号―国道39号―道道246号―国道244線―国道334号(約412km)
- ●電車・バスの場合
札幌駅から函館本線・石北本線の特急に乗り網走駅で下車。釧網本線に乗り換え知床斜里駅下車。知床斜里駅前から斜里バスに乗り岩尾別温泉下車。
斜里バス株式会社 【駐車場情報】
住所:北海道斜里郡斜里町遠音別村 斜里町岩尾別温泉
駐車台数:10台+7台
料金:無料
【中~上級者向け】知床の秘境感を堪能できる羅臼コース
登山道からの標高差が大きく、傾斜も厳しい木々や草に覆われた登山道ですが、岩尾別登山コースに比べて人が少ないので秘境感があります。沢沿いの岩飛び、ガレ場などがある中~上級者向けコースで、コース距離・時間が長いため早朝出発がおすすめ!登山途中にはトイレもトイレブースもありません。
合計距離: 17.85 km
最高点の標高: 1613 m
最低点の標高: 122 m
累積標高(上り): 2799 m
累積標高(下り): -2799 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 日帰り
- コースタイム:10時間50分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
登山口(60分)→里見台(50分)→第一の壁(70分)→泊場(60分)→屏風岩(80分)→羅臼平(25分)→標識(35分)→羅臼岳(25分)→標識(20分)→羅臼平(50分)→屏風岩(45分)→泊場(60分)→第一の壁(30分)→里見台(40分)→登山口 
スタートとなる登山口は羅臼温泉野営場にあります。露天風呂のあるキャンプ場で、羅臼岳登山の幕営ベースに最適!

登山口から沢沿いの道を歩きます。木がくれの滝から沢を離れ尾根伝いに登っていくと、羅臼の市街地を見下ろせる里見台に到着。

里見台からしばらくは緩やかな道を進んでいきます。笹薮に覆われている場所も多くヒグマの目撃情報もあるので、注意して進んでください。

笹だらけのハイマツ原を越えたあと、第1の壁・第2の壁のトラバース道を抜け、スズラン峠から下って的場に向かいます。道幅が細いところもあるので注意しましょう。

ハイマツ原から先では多くの高山植物が見られるようになってきます。エゾトリカブトやチシマフウロ、エゾノツガサクラやハクサンチドリなど多くの花々を楽しみながら歩きましょう。

的場付近で清水沢を渡渉します。この沢は硫黄を含むため岩が真っ白!水量が多い場合もあるので、場所を選んで渡りましょう。

沢を渡ると、再び登りの始まり。苔むした緑のトンネルの枯沢を登りつめると、右手に切り立った屏風岩が見えてきます。この周辺も急斜面で雪渓が遅くまで残っている場所のため、事前に確認が必要!

撮影:YAMAHACK編集部
傾斜を登り切り羅臼平に出ると、岩尾別温泉からのコースと合流します。山頂からの知床半島の絶景を堪能してください!
下山は同じコースで帰りますが、下りは傾斜がきつく危険なので足元に気を付けてください。
羅臼温泉登山口へのアクセス方法はこちら
- 【札幌から】
- ●車の場合
札幌北IC(札樽自動車道・道東自動車道)―阿寒IC―国道240号―国道274号―道道1040号―道道885号―道道150号―国道335号―国道334号―羅臼温泉野営場(約455km) - ●電車・バスの場合
札幌駅からJRで釧路駅下車。阿寒バスに乗り、羅臼営業所下車。徒歩30分。阿寒バス【駐車場情報】
住所:目梨郡羅臼町湯ノ沢町
電話番号:0153-87-2126
駐車台数:53台
料金:300円(清掃協力金)
羅臼岳周辺のホテル・旅館、宿泊施設
羅臼岳はコース時間が長く山小屋もないため、前泊するのがおすすめです。ここでは羅臼岳登山口に近い前泊におすすめの宿泊施設をご紹介します。
斜里町・岩尾別温泉側
【ホテル地の涯】 
登山口すぐそばにあり、源泉かけ流しの温泉を楽しむことができるホテル。原生林が生い茂るなかにある露天風呂(混浴)や丸太風呂、内風呂が人気です。現在は休業中で、2018年夏に再開予定。
住所:北海道斜里郡斜里町岩尾別温泉
電話番号:0152-24-2331
料金:1泊2食 7,500~12,750円
部屋数:41室
駐車場:30台
ホテル地の涯の詳細についてはこちら 【木下小屋】 
撮影:YAMAHACK編集部
登山口すぐそばにあるログハウス風の建物。名前の由来は、知床連山の登山道を開拓した木下弥三吉の名からきています。寝具や食事の提供はありませんが、温泉に入ることが可能。営業期間は6〜9月なので、行く前に必ず問い合わせましょう。また、熊スプレーの貸し出しも行っています。
住所:北海道斜里郡斜里町岩尾別温泉
電話番号:0152-24-2824
料金:素泊り2,000円
収容人数:30人
駐車場:7台(無料)
木下小屋の詳細についてはこちら 羅臼町・羅臼温泉コース側
【陶灯りの宿 らうす第一ホテル】 
登山口から1kmほどのところにあるホテルで、窓からは知床連山を望むことができます。肌がつるつるになると評判の温泉や、地元産の食材を使った料理が人気。
住所:北海道目梨郡羅臼町湯ノ沢町1番地
電話番号:0153-87-2259
料金:1泊2食 10,500~12,600円
収容人数:136人
駐車場:20台
陶灯りの宿 らうす第一ホテルの詳細についてはこちら 【羅臼温泉野営場】 
登山口に直結している、原生林の森に包まれた自然豊かなキャンプ場。国道を挟んで向かい側にある、無料の露天風呂「熊ノ湯」に入ることができます。
住所:北海道目梨郡羅臼町湯ノ沢町
電話番号:0153-87-2126
料金:1人300円
テント数:33張
駐車場:53台
羅臼温泉野営場についてはなっぷ 他にも羅臼岳周辺にはホテルや旅館がたくさん!旅の日程に合わせて選びましょう。
羅臼町 宿泊旅館・テント場の一覧はこちら羅臼岳と一緒に観光!世界自然遺産、知床半島の魅力

撮影:YAMAHACK編集部
知床半島は北海道の東の端にある半島で、名前の由来はアイヌ語の「地の果て・岬」を意味する言葉。その名の通り、オホーツク海に細長く突き出た角のような長細い形をしています。
知床を代表する観光スポット、知床五湖

撮影:YAMAHACK編集部
原生林が覆い茂る中にある5つの幻想的な湖で、多くの植物や動物の楽園となっている場所。ヒグマを気にせずに歩くことができる高架木道は無料で、湖に写る知床連山のパノラマを楽しむことができます。知床半島の8ヶ所の景勝地
「知床八景」の一つとしても有名。
【知床五湖フィールドハウス】 住所:北海道斜里郡斜里町遠音別村
電話番号:0152-24-3323
料金:施設は無料、散策は無料・有料があります
見学期間:4月下旬~11月下旬
知床五湖 幻の湖「羅臼湖」

原生林に囲まれた美しい湖で、水面に映る羅臼岳を見ることができます。往復3時間程度のトレッキングコースを歩きますが、ヒグマが多く生息している地域のため、熊対策は必ずして行きましょう。
【羅臼湖】 住所:北海道目梨郡羅臼町湯ノ沢町225林班
電話番号:0153-87-2828(羅臼ビジターセンター)
料金:無料
見学期間:通年
羅臼湖 目の前にそびえる羅臼岳!知床峠からの絶景

撮影:YAMAHACK編集部
ドライブコースとしても人気のある羅臼町と斜里町の境にある峠で、知床八景の一つ。雪で例年10月下旬〜4月下旬は通行止めになるため、「日本一開通期間の短い国道」と呼ばれています。羅臼岳を正面に捉えることができる、絶好の撮影スポット!
知床峠 四季ごとの情景も美しい、オシンコシンの滝

撮影:YAMAHACK編集部
知床八景の一つで、日本の滝100選にも選ばれている落差80mの迫力ある滝。流れが二つに分かれているため「双美の滝」とも呼ばれています。新緑の緑色とのコントラストや冬の凍てつく様など、四季によってさまざまな景色を楽しむことができます。
【オシンコシンの滝】 住所:北海道斜里郡斜里町ウトロ西
電話番号:0152-22-2125(知床斜里町観光協会)
駐車場:35台(無料)
オシンコシンの滝 世界自然遺産を海から探索。熊や鮭の姿も!

ウトロ港から知床岬まで出ている観光船でクルーズもおすすめ!船でしか見ることのできない知床の景色や、熊やイルカなどの野生動物、クジラや希少生物の姿も見ることができるかも?!
知床半島クルーズ 羅臼岳に登ろう!

羅臼岳は、世界自然遺産に登録されている知床半島を見渡すことができ、いつかは挑戦したい憧れの日本百名山。高山植物も豊富で、樹林帯、ハイマツ帯、雪渓歩き、岩登りと楽しい山です。ヒグマ対策をしっかりして、ぜひ登ってみてください!
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。(足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。)
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。