『高妻山(たかつまやま)』ってどんな山?
標高 | 山頂所在地 | 最高気温 (6月-8月) | 最低気温 (6月-8月) | 標高差 |
---|---|---|---|---|
2,353m | 新潟県妙高市 長野県長野市 | 17℃ | 3.4℃ | 約1,200m |
新潟県と長野県にまたがる戸隠連峰の最高峰、高妻山。美しい三角錐型の山頂部の姿から『戸隠富士』『剣の峰』『両界山』という異名もあり、日本百名山の一座にも選定されています。
登山口から山頂までのコースは長く険しく、鎖場や岩場、長い尾根歩きなど危険な箇所もある上級者向けの山ですが、トガクシショウマやシラネアオイなど多くの高山植物や山頂から見る景色の美しさなど、山の厳しさと美しさの両方を楽しめる名峰です。
高妻山に隠された地名の秘密
高妻山の稜線には、数字の後ろに仏の名前を組み合わせた不思議な地名が付いています。これは仏教の十三仏と呼ばれ、亡くなった人を浄土へと導く仏様たちです。一の不動から始まり釈迦、文殊、普賢、地蔵、弥勒、薬師、観音、勢至、阿弥陀、阿しゅく(高妻山山頂)、大日、虚空蔵(乙妻山山頂)まで続きます。いにしえの行者たちは高妻山の道行きを、冥界になぞらえていたのかもしれせんね。この十三仏の像を数えながらの登山もおすすめです!
高妻山の登山適期は?
高妻山の登山に適した時期は6月から10月。特に10月は素晴らしい紅葉を楽しむことができます。山頂からの展望も紅葉の時期は一層美しい景観となります。隣り合う乙妻山や戸隠山へ稜線上の木々、少し離れた黒姫山の広大な樹林帯が紅葉に染まり視界全体に広がります。まさにこの時期にしか楽しめない素晴らしい景観!
ごつごつとした岩場と、赤や黄色に色づいた木々が織りなす美しい景観、さらに麓や中腹、稜線や山頂部など、標高の変化により様々な種類の紅葉を楽しむことができます。
美しい自然の景色が残る高妻山の魅力は?
戸隠連峰の深部にあり、長野市街地の数か所からしか見る事のできない高妻山。さらに山頂の尖った部分しか見えず、その全容は隠されています。秘峰感を漂わせる魅力や鋭くとがった山容、バリエーション豊かな高山植物は、訪れる人を決して飽きさせません。
山頂に広がる圧巻の大パノラマ!
周囲の山より突出してる高妻山の山頂に立つと、視界を遮るものがない360度の大展望が!北アルプスの山々や、北信五岳、天候に恵まれれば遠く富士山も遠望できます。難路の先に広がるこの壮大な景色は一見の価値あり!
ハードな登山道に咲く可憐な花々
高妻山では、ハードな道のりとは裏腹に、可憐な高山植物たちの姿が楽しめます。トガクシイワインチンやトガクシショウマなどの固有種の他にも、サワウツギやナナカマド、シラネアオイ、ギンリョウソウなど、実に多くの花が咲いています。
登山口から山頂まで、多種多様な登山道!
高妻山は登山口から山頂までの標高差も約1200mある上に、アップダウンを繰り返すというハードさ。さらに急登や鎖場が連続し登山者の体力を削られるうえ、左右に切れ落ちた尾根道を恐る恐る渡る登山道が待っています。まさに体力と技術が試される山なのです!
登山の難易度を表すグレーディング表では、上から二番目に難易度が高い「D」に分類されています。必要な技術や能力については、事前に確認するようにしましょう。
◇厳しい岩稜や不安定なガレ場、ハシゴ・くさり場、藪漕ぎを必要とする箇所、場所により雪渓や渡渉箇所がある。
◇手を使う急な登下降がある。
◇ハシゴ・くさり場や案内標識などの人工的な補助は限定的で、転落・滑落の危険箇所が多い。
◇地図読み能力、岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要
◇ルートファインディングの技術が必要
地図も必ずチェック!山と高原地図 妙高・戸隠・雨飾 火打山・高妻山
登山地図の定番といえばコレ!マップ詳細はもちろん、バスやマイカーでのアクセスにも便利!
高妻山の天気は?
高妻山に行く前に現地の天気をこちらでCHECK!
足場に注意!表情豊かな日帰りモデルコース

そんなハードな上級者向けの山、高妻山の日帰りモデルコースを紹介します。高妻山では、登山途中にある避難小屋での宿泊を推奨しておりません。なるべく早い時間に登山をスタートするよう心掛けてください。
マイカーの場合は日帰りも可能ですが、それ以外は前夜泊をおすすめします。
また付近にはクマの出没情報もありますので、クマよけ鈴などの対策も忘れずに行いましょう!
最高点の標高: 2308 m
最低点の標高: 1173 m
累積標高(上り): 1544 m
累積標高(下り): -1544 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 日帰り
- コースタイム:9時間30分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
戸隠キャンプ場(145分)→一不動避難小屋(60分)→六弥勒(120分)→高妻山山頂(90分)→六弥勒(145分)→戸隠キャンプ場
戸隠キャンプ場を出発し、戸隠牧場を経て登山道へ進みます。
樹林帯の穏やかな登りを進むと、次第に沢沿いの道が始まります。沢沿いの道を登ると「滑滝」に掛かる鎖場に突き当たります。続いて「帯岩」と呼ばれる大きな一枚岩にかかる鎖場です。滑りやすいので慎重に登りましょう。
岩場や鎖場が終わると最後の水場「氷清水」があり、少し進むと一不動避難小屋に到着します。一不動避難小屋からは稜線を北に進路をとります。
小さなピークを登り降りしながら稜線を進みます。右側は断崖になっていますので注意して歩きましょう。
一不動避難小屋から1時間弱で五地蔵山山頂に到着。山頂からは妙高山や黒姫山が展望できます。
五地蔵山からまもなく弥勒新道との分岐点、六弥勒に到着します。ここから山頂方面へ、またしばらく小さなピークを登り降りを繰り返します。九勢至周辺では5月中旬~6月上旬にかけて「シラネアオイロード」とも呼ばれるお花畑が続き、疲れた身体を癒してくれます。
山頂部直下の八丁ダルミから300mの最後の急登を登りきると、ついに山頂に到着です。山頂には祠や剣など、数多くの修験道の史跡が!
森林限界を超えた高度にある頂上は、視界を遮るものがない素晴らしい展望が広がっています。山頂から西を望むと白馬山を初めとする北アルプス北部の山々が屏風のように連なっています。南東側には八ヶ岳や富士山まで遠望することができます。
下山はしばらく往路を戻ります。五地蔵山山頂の手前に六弥勒という分岐点がありますので、ここを「弥勒新道」へ進路を取ります。この弥勒新道は往路の一不動経由とは違い、鎖場などの危険箇所がありません。ただし急坂が続くので雨の時は滑らないよう注意が必要です。
弥勒新道は戸隠牧場内で往路に合流します。そこから出発点と同じ戸隠キャンプ場に到着したら長い山行の終了です。
健脚者・上級者向け!戸隠山との縦走もおすすめ
戸隠山は高妻山の南に隣接する1,904mの山で、北信五岳にも数えられる長野県を代表する山の一つです。岩場からなる荒々しい見た目の通り、戸隠山の登山コース上には鎖場やナイフリッジなど危険個所が多数!
山のグレーディングは高妻山と同じ難易度「D」となっていますので、十分注意して登山を行ってください。
また、コース途中に一不動避難小屋がありますが、荒天時・非常時のみの使用を推奨されています。高妻山~戸隠山の縦走は距離も長く、ハードな登山道が続くため、上級者の方も余裕を持った計画を立てましょう。
長野県HP
最高点の標高: 2308 m
最低点の標高: 1173 m
累積標高(上り): 2106 m
累積標高(下り): -2061 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 日帰り
- コースタイム:12時間5分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
戸隠キャンプ場(25分)→戸隠牧場分岐(150分)→六弥勒(120分)→高妻山山頂(130分)→一不動避難小屋(70分)→九頭龍山(50分)→八方睨(110分)→戸隠神社奥社(40分)→奥社入口
往路の高妻山山頂までは比較的登山道が整っている弥勒新道で登っていきましょう。(日帰りコース同様、一不動避難小屋経由の登山コースを使っても構いません。)高妻山山頂に到着し、一不動避難小屋まで下りてくると戸隠山への稜線の始まりです。
一不動避難小屋からは急登の連続!屏風岩から小さなピークを二つ越え、さらに急坂を登ると九頭龍山です。南東側が大きく切れ落ちた稜線を転落に注意しながらアップダウンを繰り返すと、戸隠山の山頂に到着します。

戸隠山山頂からの眺望は高妻山にも劣りません。北には高妻山の円錐形の美しい姿が!
山頂から下りると間もなく八方睨の分岐に差しかかり、そこから戸隠神社奥社を目指します。分岐を過ぎると間もなく二つのナイフリッジ、「剣の刃渡り」と「蟻の塔渡り」の登場。特に蟻の塔渡は両側が切れ落ちた幅約20cmほどの足場が20mほど続く、このコース最大の難関です。
蟻の塔渡りを慎重に越えた後も岩稜や鎖場が続きます。その後はオーバーハングした岩場の下を通る「百間長屋」や「五十間長屋」を経て、急坂を降りるとゴールの戸隠神社奥社に到着です。そこから終点の奥社入口までは整備された参道を約40分程歩きます。
高妻山の山小屋&アクセス情報
高妻山の登山コースはロングコースです。出発点ともなる戸隠キャンプ場に前泊し、早朝出発することをお勧めします。
一不動避難小屋
山小屋ではなく緊急用の避難小屋。緊急時以外の宿泊は推奨されておりません。余裕を持った山行計画を立てましょう!
住所(場所):戸隠連山主稜線、1747m
戸隠キャンプ場
戸隠キャンプ場は戸隠連山の麓標高約1,200mにあるキャンプ場。場内にはオートキャンプサイトやバンガロー、キャビンなどの他、温泉施設や釣り場などもあります。
住所(場所):長野県長野市戸隠3694
電話番号:026-254-3581(4月下旬~10月下旬)
営業期間:4月下旬~10月下旬
利用料金:3,000円(オートキャンプ場)
駐車台数:約130台
高妻山登山口へのアクセス
●車の場合
信濃町IC(上信越自動車)→国道18号線 →県道36号線 →戸隠キャンプ場向かい
●電車・路線バスの場合
JR長野駅下車 →路線バス「70長野-戸隠高原」乗車 →戸隠キャンプ場下車
【高妻山登山口専用駐車場】
一度は制覇したい戸隠連峰、高妻山
戸隠連峰の中でもひと際高くそびえる高妻山。尖ったその姿は「剣の峰」に相応しい山容です。岩場や鎖場などゴツゴツとしたハードな登山道と可憐な高山植物たち、さらに山頂に広がる大パノラマは多くの登山者の心を掴んで放しません。是非この絶景を見に挑戦してみませんか?
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。(足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。)
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。