12年使い続けた登山靴でもソール交換はできる? ボロボロの登山靴を修理してみた

登山を続ければ続けるほど愛着がわいてくる登山靴ですが、登った山の分だけ擦り減ったソールをずっと使い続けることはできません。新品の靴を買うこともできますが、ソールを交換するのも一つの手です。今回は、編集部スタッフが12年使い続けた登山靴のソール交換を石井スポーツの工場で密着取材しました。果たしてうまく修理できたのでしょうか?

登山靴

撮影:YAMA HACK編集部
長年使い続けている登山靴ほど愛着が湧き、できるだけ長く使い続けたいと思うものですよね。でも、岩場など険しい山道を歩けば歩くほど丈夫なソールも擦り減り、様々な所にほころびが出てきてしまうもの。「新品を購入することもできるけど、ソールを交換すればまだまだ使えるのでは・・・」そう思ったことはありませんか?

10年以上履き続けた登山靴でもソール交換はできるのか?

履きつぶした「マッテンベル ガイド」
撮影:YAMA HACK編集部
実は編集部スタッフYも同じことを思っている一人。大学時代から12年履き続けているオールレザーの登山靴は、最新の靴と違い、重くてゴツいけれど、履くほどに足になじみ、靴擦れを全く起こさないお気に入りの靴です。北海道の雪山から日本アルプスの大縦走まで、年に数回行うハードな登山で苦楽を共にしてきた相棒のようなもので、できるならばこの先も使っていきたい・・・そんな思いからソールの貼り替えを依頼してみました。

登山靴を知り尽くしたエキスパートに修理を依頼

ICI石井スポーツ登山技術研究所
撮影:YAMA HACK編集部(今回は取材のため、直接製靴工場に持ち込み)
今回、ソールの貼り換えをお願いしたのは登山靴の修理全般を店舗で受け付けているICI石井スポーツ。

ICI石井スポーツというと登山道具全般を取り扱う小売店のイメージですが、実は戦後すぐに登山靴、スキー靴の製造販売をするところから始まっており、今も市ヶ谷にある本社一階は「ICI登山靴技術研究所」として登山靴全般の修理を行う工場になっています。ICI石井スポーツの原点は「登山靴」から始まっているんですね。

革
撮影:YAMA HACK編集部(どんなメーカーの靴が来ても対応できるほどの数多くの革も用意されている)
工場内は様々なサイズのソールや革、靴型などが所狭しと並ぶ空間。年季の入ったミシンや、今はもうない町工場の機械まで現役で動いています。

ICI石井スポーツ 中さん
撮影:YAMA HACK編集部
靴の修理を担当していただいたのは登山靴を知り尽くしたこの道42年の大ベテラン、工場長の中 真人さん。

編集部Y:結構ボロボロなんですが・・・大丈夫でしょうか?
中さん:大丈夫だよ!せっかくだから修理してるところ見ていく?

気さくな中さんの言葉に甘えて、ソール貼り替え工程を見せていただきました。

1日3~6足まで!すべて手作業の職人技

ソール交換
撮影:YAMA HACK編集部
今回はソールの貼り替えなので、まずは古いソールをはがすところから。登山靴を機械にセットして、ソールの接着剤をはがすために熱を加えます。

ソールはがし
撮影:YAMA HACK編集部
靴が十分温まったらソールの端の部分から工具でメリメリっと接着面をはがしていきます。手際よく数分ではがしてしまいましたが、力のかけ具合などコツが必要で、手早くできるまでは長い経験が必要なのだそう

ソール比較
撮影:YAMA HACK編集部
剥がし終えたソールと新しく接着するソール。古いソールはペラペラで、厚みが全く違うことがわかります。ミッドソールに届いてしまう前に交換するようにしましょう。

ミッドソール
撮影:YAMA HACK編集部
次に、ミッドソールに残った接着剤を研磨してきれいに取り除きます。

研磨を終えた登山靴
撮影:YAMA HACK編集部
研磨を終えたミッドソールはまるで新品のような美しさ。この後接着剤を付けてソールを接着します。

ソールを削る中さん
撮影:YAMA HACK編集部
最後に、靴底の形状に合わせて余分な部分を皮切り包丁で切り回して概ね完成です。

あっという間の出来事のようですが、実際には接着剤を乾かす時間や、剥がれ防止用のネジどめ、さらに糸のほつれなど工程は多岐にわたり、1日に対応できる靴の数は、1人当たり3~6足ほどだそう。一つひとつ丁寧に仕上げているのがみていてひしひしと伝わってきました。

修理からカスタマイズまで対応!

縫製作業
撮影:YAMA HACK編集部(ハトメ穴リペアなどもすべて手作業でていねいに修理)
ICI石井スポーツではソール交換はもちろんのこと、D環やほつれの修理のほか自分の足型に合わせたカスタマイズまで受け付けています。外反母趾ですぐ痛くなってしまう・・・なんて悩みも相談したら購入時に対応してくれますよ。

登山靴の修理に関する気になる5つのギモン

日々様々な登山靴の修理に追われている中さんに、修理や登山靴に関する素朴な疑問を聞いてみました。

①修理が難しい登山靴はありますか?

ゴアテックス
撮影:YAMA HACK編集部
編集部Yこういうのは対応できない!など、修理が難しい場合はありますか?

中さん:ゴアテックス®が使われてる靴の場合だとメンブレン(防水透湿素材)が入っているので、穴があいてたり縫製などで穴をあける必要がある場合は難しいね。シーム剤を塗るとか方法はあるけれど、基本的にそういう場合は買い替えたほうがいいね。

②どのメーカーの靴でも修理してもらえるの?

型紙
撮影:YAMA HACK編集部(オリジナルの靴の型紙。この形に革を切り取って縫製し、一足の靴が生まれる)
編集部Y修理ができないメーカーの靴などはあったりしますか?

中さん:基本的には何でも対応するよ。だって、できないなんて悔しいじゃん?うちは昔からオリジナルで靴も作っているのが強み。靴を一から作ってきたから、ほかのメーカーの靴でもある程度わかるんだよ。他では直せなかったような靴を持ち込まれることもあるよ。

③どういった内容の修理が多い?

ウレタン製のソール
撮影:YAMA HACK編集部(ウレタンの経年劣化は使ってなくても起こる)
編集部Yこれまでに持ってこられた靴の修理の中で多いものは何ですか?

中さんやっぱり7,8割はソールの貼り替えかな。ほかにもいろんな修理があるけど、D環(靴ひもの環)など金具の故障なんかは多いね。あとは、例えば、ミッドソールに使われているウレタンの経年劣化。10年使われてない靴でもウレタン素材が劣化して剥がれてしまうことがあるんで、ぜひ自分の靴に興味を持っていつもチェックしておいてほしいね。

④修理期間はどのくらいですか?

登山靴
撮影:YAMA HACK編集部(日々全国から送られてくる靴)
編集部Y修理の内容にもよりけりかもしれませんが、大体どのくらいで修理を完了してお戻しするんですか?

中さん:少しの調整はきくけど、全国から毎日修理の依頼が来ているのでだいたい40日くらいだね。

⑤一般的な靴修理店で修理してもらうのではだめ?

修理道具
出典:PIXTA
編集部Y駅構内などでよくビジネスマンが靴の修理をしているのを見かけますが、そういったお店で登山靴を修理してもらうのはどう思いますか?

中さん:ダメじゃないけど、登山靴独自の製法があったりするので難しい場合があるね。修理してあげたいけど、前の業者の修理が原因で対応できなくなることも。

長く使いたい靴だから、もし壊れたらプロに依頼してみて

修理工場スタッフの皆さん
撮影:YAMA HACK編集部
今回はICI石井スポーツ本社にて、登山靴に関する様々なことを教えてもらいました。現在、工場では中さんのほかにも3名のスタッフが常駐しており、全国から集められた登山靴を一日中修理しています。多くの山を登るほど履いている靴には思い入れが深まるもの。もし壊れてしまったら修理ができないか、一度思い出してみてくださいね。

石井スポーツ登山工場について

おまけ:後日、修理が完了した登山靴が到着

交換後のソール
撮影:YAMA HACK編集部
約1か月後、修理された登山靴が無事到着しました。確認してみると、ソール部分はまさに新品そのもの!眺めているだけで、またこの靴で山に登ってみたくなりました。それは、まるで初めて登山靴を買ったときのようなワクワク感。再び、これからの登山を支えてくれるものになるのでしょう。

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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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