①常に自分の現在地を把握する
ホワイトアウトは樹林帯よりも見晴らしの良い雪原で起こるイメージが強いですが、実はどこでも起こり得ます。周り一面が真っ白になってしまうため、何も対策をしなければ立ち往生するしかなくなってしまいます。常に周りの景色を把握し、地図上での自分の位置を把握しておくようにしましょう。
行き帰りが同じルートの場合には、時々振り返って帰りに見える景色を確認しながら登るとよいです。
どの方向にどの程度歩けば避難小屋や風雪をしのげる場所がある、と自分でわかっていれば、急な視界の不良でも焦らずに対応することができます。
もし周りに何もなく方向がつかめない、または、雪庇や崖などの危険がある場合は無理に行動せず視界が回復するのを待つのも有効な対策のひとつです。
ただし、体を冷やすことになるため、服を着こんだり、必要に応じてツェルトや雪洞などを設営してビバークできる態勢を整えるなどしましょう。
ビバークの方法は必ず事前練習をしておいてください。実際にビバークせざるを得ない状況に追い込まれても、一度でもやったことがあることをやるのと一度もやったことがないことをやるのでは大きな違いです。
②焦らない、急がない

突然視界が真っ白になってしまったら不安になるのは自然なことですが、焦って進んでしまってはそれまで把握していた自分の居場所を見失ってしまうだけではなく、体力・精神力を消耗してしまいます。
また、方向感覚を失い、無意識の内に円を描くように同一地点を彷徨い歩いてしまう、リングワンデリングのリスクもあります。
ビバークする時のことも考えて、体力を残しておくこともとても重要です。まずは焦らず、立ち止まってみましょう。
③GPSを持ち歩こう、地形図判読の技術を身につけておこう
現在地を把握するための基本は地形図とコンパスを使う方法ですが、特徴に乏しい地形や岩場など細かい地形が連続する地形の中で視界がなくなってしまうと、地図とコンパスだけで常に現在地を把握するのは特に難しいものです。
雪山登山をする場合は、地図と併せてハンディGPSを持ち歩き、自分の居場所を把握したり進む方向を決める補助としましょう。今はスマホアプリなどもありますが、風雪のなかでは起動や操作が難しくなるので要注意です。
また、GPSマップであっても現在地は「地形図」上に表示されるため、地形図を読む技術は必要です。必ず事前に身につけておきましょう。
④ロープでお互いを結ぶ
視界が極端に狭いなど、パーティの仲間とはぐれるリスクがあるときには、お互いをロープで結んで行動するのも有効です。
それでも、この瞬間しか見られない景色があるから・・・
ホワイトアウトは雪山だけではなく、濃霧や豪雨でも起こり得る山のリスク。事前の対策や落ち着いた対応は当然必要ですが、その時、その場所でしか出会えない美しい景色もたくさんあります。山で起こり得るリスクの一つとしてしっかり把握し、対策・準備をしたうえでぜひ登山に挑戦してみてくださいね。
記事監修:登山ガイド 田村茂樹氏