「ホワイトアウト」とは?
「ホワイトアウト」とは、名前の通り、雪や霧、雲に包まれて視界一面が真っ白になってしまう現象のこと。特に雪山の中で強烈な吹雪や地吹雪でホワイトアウトになると、足元まで真っ白になり、ほとんど身動きが取れなくなってしまうこともあります。
雪山登山のリスクとして取り上げられがちですが、スキー場のゲレンデや雪国の街中、夏山でも濃霧などによって起きる事があります。
ホワイトアウトの原因となる3つの要因
ホワイトアウトと一口に言っても、その原因は様々。大きく次の3つに分けられます。
さらに降雪(①)+濃霧(③)というケースなど、さまざまな原因が折り重なることも。
風や低温も伴うと危険度が高くなるため、注意が必要です。
ホワイトアウトになった時に感じる6つのこと
実際に編集部スタッフが山の中でホワイトアウトを体験したときに感じた、6つの危険な要素をご紹介します。
①方向感覚が狂う
普段は意識しませんが、自分が向いている方角は、周りの景色をもとに相対的に認識されています。
しかし、周り全てが真っ白になってしまうことにより、自分とそれ以外の物との位置関係が認識できなくなり、向いている方向がわからなくなってしまいます。
②平衡感覚が狂う
方向感覚がなくなることはなんとなくイメージできると思いますが、実は平衡感覚も鈍くなってしまいます。中にはくらくらしたり、気分が悪くなってしまう人も。
編集部スタッフがホワイトアウトにあった兵庫県の氷ノ山山頂付近は、なだらかな雪原。地図上での自分の位置から緩やかな上り坂を登っているのはなんとなく分かっていても、自分が登っているのか下っているのか、平たんな道を歩いているのかを把握することが非常に困難に感じました。
③距離感が狂う
ホワイトアウトになると、自分の周りに本当に少しだけ、かろうじて見えるものがある程度の視界になります。コンパスでは方向は分かっても、目的地への距離が分かりません。周りの景色から自分の位置を把握できないため、目印があってもそれが真っ白な空間に浮いているように見えてしまい、正確な距離感を把握するのが難しくなってしまいます。
また、遠くが見えないので、たくさん歩いた気になってしまう(歩いた距離を過大評価してしまう)場合もあるため、注意が必要です。
④まっすぐ歩けなくなる
進む方角がわかっていても、それがほんのわずかでもずれていた場合、距離を稼ぐほどに大きく進路が変わってしまいます。
また、利き足や身体のバランスによって、まっすぐ歩いているつもりでも無意識に進む方向は曲がってしまいます。視界良好であれば直進方向にあるものや景色から自分がまっすぐ歩いているかを把握して補正できますが、コンパスの矢印しか進む方向の目印がない場合、その精度は低くなってしまいます。
⑤仲間や登山道が見えなくなる
特に酷いホワイトアウトに遭遇した場合、自分の足元が見えるだけということさえあります。こうなると、パーティーを組んで登山をしても前の人がかろうじてわかる程度になってしまいます。
また、登山道を歩いていても先の様子やマーキングが見えないため、ちょっとした獣道や踏み跡などでも登山道と勘違いして迷い込んでしまうこともあります。
⑥トレース(足跡)がすぐに消える
雪山登山では夏山のような登山道はなく、自分の踏み跡が帰りの道しるべにもなります。
しかし、雪が激しく舞っている状態では自分がつけた足跡に雪が積もり、ものの数分で消えてしまうことは珍しくありません。
ホワイトアウトの対策
万が一、入山中に「ホワイトアウト」に見舞われたらどうするべきでしょうか。事前にできる対策と、実際に山での対策に分けて準備しておきましょう。
事前の対策
①天気を確認しておく
山の天気は変わりやすいため、入山前に天気予報は必ず事前に確認しておきましょう。天候だけではなく、風速の確認も大切です。
②ナビゲーション表を作っておく
万が一の時でも正確にこれから進む道を把握するため、地図読みやGPSとは別にナビゲーション表を準備しておきましょう。地図上にポイントとなる地点を定め、進行方向の磁北線に対する角度、距離、標高差などを予め測って記入しておくことで、通常の地図読みよりも正確に進むことができます。