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新しい行き先は、自分の経験が教えてくれる――立教大学山岳部コーチ・武石浩明さんインタビュー(2ページ目)

武石さん:今の活動は大学によっても様々。海外遠征までするところはあまりないけど、自分たちの好きなようにチャレンジをしてくれればいいと思ってますよ。本人たちで行き先も決めてもらうんです。「したい!」と思ったことに対して今の状態で無理ならば技術の指導をするし、「ここに行け!」という誘導をすることもない。自分が現役のころは円高やトレッキングピーク(※)の開放があったりでタイミングもよく、入部1年以内にヒマラヤにもチャレンジできていたんですよ。でも、今でもその気になればできるはず。
※通常面倒な手続きが多いヒマラヤの山の中で、トレッキングピークの対象となる山は簡易的な手続きで登ることが可能になった。

編集部 :現役にはどのような技術指導をされているんですか?

武石さん:体力は最低限必要ですが、命を守るために必要な技術。雪上訓練やクライミング技術などですね。部員が少なくなってしまうことでこういった技術が後輩に継承されづらくなるし、いったん0人になれば途絶えてしまいます。そんなときのために、我々OBが様々な登山技術を継承するバックアップをしています。

編集部 :たしかに、そうすることで山岳部や山岳会といった団体は世代を超えて技術が継承されていくことができますね。

山岳部などで継承される技術が果たす役割って、どんなものだと思いますか?

武石さん:ワンダーフォーゲル部や高校山岳部では雪山など禁止されているところもある。でも、山岳部にはそういった規制はありません。例えば、現役の時に北海道の日高山脈で沢登り縦走をしたことがあるんです。軽量化するために食料は自給自足で考えていたんですが、結局1日目にイワナが釣れただけで、ほかは全部ふりかけ(笑)。岩登りや懸垂下降の連続、ゴルジュで流されたりハイマツをかき分けたり、ヒグマに出会ったり、様々な経験をしました。一週間誰にも会わなかったけど、めちゃくちゃ面白かった!

日高沢登りの話をする武石さん

撮影:YAMA HACK編集部

武石さん:つまり、山岳部って、「つらいこと」をするところではなくて、「何でも好きなこと」をやっていいところなんですよ。そのために必要なのが、最低限の技術ということですね。やりたいことをするには技術が必要。だからそれを現役に教えるけど、それ以上のことは言わない。部員は自分たちなりの挑戦を考えて活動していく。その中で、もっと面白いことは何だろう?と考え、過酷かもしれないけど、どんどん経験を積み重ね、レベルアップしていくんです。


編集部 :
沢登りの話も、きっと何も経験がない人はそんなことをしようとも思わない。でも、経験を積むことで、「日高山脈で自給自足の沢登り合宿やってみたら楽しそうじゃない?」という発想に至るんですね。

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