【大峰山遭難事故】幻聴が止まらない。捜索10日目奇跡の救出へ

遭難で一番多い原因が”道迷い”。今回は、大峰山脈で実際に10日にもわたる遭難にあい、奇跡の生還を果たしたjyunntarouさんに、当時のお話をお聞きしました。山を楽しむためにも、改めて自分の力量、準備、知識が十分なのか見直したいですね。今回は第一弾!

アイキャッチ画像出典:ヤマレコ by jyunntarou(写真は、2016年8月弥山登山時の様子)

遭難10日目、高校4人グループは奇跡的に生還

出典:PIXABAY(写真はイメージです)
とあるラジオでこう流れました。「神戸の高校生、大峰山遭難事故捜索、本日で打ち切り・・」しかし当時同じ高校だった4人グループは奇跡的に生還したのです。

これは貴重な実話。当事者のjyunntarouさんに話を伺った

出典:ヤマレコ by jyunntarou(写真は、2017年2月19日岡山県後山登山時の様子)
テレビやニュースで遭難事故を耳にしても、その実態はほとんど報道されることがなく、専門誌や書籍、特集などで目にする程度です。今回は、10日間にもわたって行方不明だったにも関わらず、奇跡的に生還した大峰山脈遭難事故の当事者の1人、jyunntarouさんに当時の様子をお話して頂きました。

この事故はもう、数十年前にもなりますが、未熟さと気の緩みから起こしてしまった遭難事故。少しでも私のような未熟さが故による「遭難」してしまった「例」がお役に立つならば是非話をしたい。毎年山岳遭難事故が増え続けております。
遭難して生き残ったとしても、かなりのリスクを背負うことや 周りの方々に多大なご迷惑がかかることを経験からお伝え出来れば・・・by jyunntarouさん

大峰山脈は谷が多く一歩踏み外すと、深い谷へと迷い込む

遭難したのは、付近に世界遺産の大峰山寺などがある奈良県 大峰山脈の”小笹谷”付近です。女性禁制の女人結界門や鍾乳洞が存在し、毎年多くの登山者が訪れます。jyunntarouさんは、すでに六甲の難関と言われる「大月地獄谷」や「西山谷」を全て直登していたため自分の力量への過信がありました。また、つきあげた稜線には避難小屋もあるし大丈夫だろう・・・という軽い気持ちで2泊3日の山行に4人で向かいました。

発端は”地図の過信”が招いた道迷い

From PIXTA 出典:PIXTA(写真はイメージです)
当時使っていた登山地図には、小笹谷・ノウナシ谷など”赤い波線道”が記されていたと記憶しています。赤い波線が付いた道は難路ではあるものの、”道”を示していたはず。地図を鵜呑みにして、目の前の状況を見なかったことで、登山道を外れトラバース道に迷い込んでしまったのです。

地図や本で見覚えのない”滝”が出没し、雷雨が続いた

出典:PIXABAY(写真はイメージです)
しばらくは道迷いをしたことに気付かず、地図でも本でも見た覚えのない滝を見て、はじめて「迷った」と気づきました。しかしその時にはすでに谷と谷の間に挟まれ、戻ることが出来なくなっていました。

遭難したのは2日目。崖の上でロープに繋がり、ビバーク

出典:ヤマレコ by jyunntarou(写真は、2016年8月弥山付近チェルト泊の様子)
1日目は順調だったものの、2日目小笹谷付近で、気づけば登山道を外れ見覚えのない滝にぶつかりました。30mはあるであろう滝を目の前に、高巻をして脱出を試みてもすでに日は暮れ、崖の上でロープに繋がりビバークをしました。

しかも 1日目に優雅に宴をし、食料は大半を消費していた

From PIXTA 出典:PIXTA(写真はイメージです)
1日目に神童子谷の河原で、飯盒でお米を炊き、焚火をしながら高校生にしては豪華な宴をしていました。まさかこのあと遭難するとも思わずに・・・2日目のビバーク時には持ってきた食料はすでに半分以下でした。


食料を4人で均等に割る。すべて水増ししながら流し込む

出典:PIXTA(写真はイメージです)
すでに食料が底をつきそうな状態だったため、煮沸した川の水を飯盒に多めに入れ、スープは更に多めに水を入れ、味のしないおかゆとスープを4等分に綺麗に割って、胃に流し込む。ただ生きるためになんとか栄養と水分補給をしていたような状態です。

リーダーだった自分は、道を求めて登攀を。4日目には意識がなくなりはじめ、遂に高熱を出してしまう。

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2日目から、雷雨の影響もあり身動きがとれなくなってしまいました。ビバーク箇所はそのままに、リーダーだった自分はなんとか”道”を探そうと、崖を登攀し無我夢中でした。気づけば腕や足は傷だらけ・・。遭難4日目頃でしょうか、意識が朦朧としはじめ、高熱を出してしまったのです。

雷で地面が揺れる。テントを這い出て、身を寄せ合う

出典:PIXABAY(写真はイメージです)
高熱で朦朧としている上、雷雨が続いていました。テントのポールは金属なのでとても怖い。しかもドーンと雷が落ちると地面が揺れるんです。私たちはテントから這い出て、雷雨の中身を寄せ合って暖をとり、声を掛け合いました。

 遭難4日目。最後の食事は、メンバーの愛が詰まっていた

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いよいよ4日目には食料が底をつきました。最後の食事になった、ほぼお湯?なおかゆ。それでも大事な食事です。高熱を出し震えていた私に、差し出してくれたおかゆを見ると・・・明らかにほかのメンバーよりも量が多い。口数が多くないメンバーの一人がこう言ったのです。

「お前はリーダー。大変な苦労をかけて道を作ってくれた。手足見てみろや・・傷だらけや・・。食べろ。元気出してもらわんと・・・。」

素直に、流し込みました。今でもその言葉は、その光景は鮮明に覚えています。しかも翌日には不思議と熱もひいていました。もしあの時、みんなの気遣いがなかったら、もしかしたら死んでいたかもしれない。


遭難5日目。まだ生きている。でもラジオから流れてきたのは自分たちの遭難のことだった。

出典:アマゾン(写真はイメージです)
「これ、俺たちのことだよね?」情報収集のために連日つけていたラジオ。途中で単三電池が切れてしまい、懐中電灯の電源とつなげてどうにか復活をしました。しかしそこから聞こえてきたのは、まさに自分たちのこと、そして生存の期待は難しいだろう・・そんな内容が流れたと記憶しています。

確かに頭上には捜索のヘリが。でも・・いくらタオルを振っても気づかない。

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食料が底をつきたので、「光合成しようぜ」なんて話ながら雨があがると太陽を求めて、そんな冗談を言い合いながら気を紛らわしました。時折聞こえるヘリの音は、きっと私たちを探していたのでしょう。音が聞こえると必死でタオルをまわしましたが、ヘリは間もなくどこかへ消えて行ってしまいました。

遭難10日目「神戸の高校生、大峰山遭難事故の捜索、本日で打ち切り」まじかよ、おれたち生きてるよ・・

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気づけば遭難から10日も経っていました。ラジオからは捜索打ち切りの知らせが流れ、極度の空腹と、寒さ、そして幻覚や幻聴が止まらなくなり、全員が平常心を保つのが不可能な状況になっていました。

子供の声が聞こえる・・幻覚・幻聴が止まらない。遺書を書きはじめた


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子供の声が聞こえる・・橋を見つけたよ!・・水道の蛇口があるよ・・お経が聞こえてくる・・。私たちは4人とも幻覚と幻聴が見えている状態でした。食料もすでになく、「もう死ぬんだな」と全員が声をかけあうわけでもなく、それぞれ遺書を書き始めたのです。死を覚悟した、いや、半ば生きることを諦めかけていたのかもしれません。

その時だった。「あの滝にひっかかっているモノ、なんですかねえ?」10日目にして奇跡の救出へ

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出典:PIXTA(写真はイメージです)
一瞬、幻聴かと思いました。遺書を黙々と書いていた手が止まり、4人で顔をあわせました。足音と共に、会話が聞こえてきたんです。それは幻聴ではなく捜索を切り上げ引き返す、救助隊の方だったのです。大滝にロープで垂らしておいた黄色いポンチョを偶然発見し、私たちは10日目にして奇跡の生還を果たしました。

しかし、そこからがキツかった。マスコミからの追求、数百万に登る捜索請求・・その全貌は第二弾で!

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救出されてホッとしたのは束の間、私たちを待っていたのはマスコミや学校からの追求、無期限停学処分、そして高級車は軽く1台は買えるであろう救助費用の請求でした。

自分たちを助けてくれた救助隊長に、2016年再会も。

出典:ヤマレコ by jyunntarou(写真は、2016年富士山の様子)
2016年の秋には、私たちを助けてくれた当時の隊長に再会もしました。下山後のマスコミ、学校からの追求や隊長との再会エピソードは第二弾でお伝えします。

遭難は誰でも起こりうる。どうか十分な準備と、過信をしすぎず自分の力を見極め行動を

出典:ヤマレコ by jyunntarou(写真は、2016年冬期六甲の装備一部)

私は、自分の力量を過信し、尚且つ様々な情報を的確に分析し判断をせずに道迷いを起こしてしまいました。年々増加する山岳事故。どうか十分な準備と、状況判断をして山を楽しんでほしい by jyunntarouさん

jyunntarouさんの山行記録一覧

 

【道迷い対策・遭難の際に対応にあたって】

今回ご紹介した内容は、実話に基づく情報であり対応方法など推奨するものではありません。必ず、経験や体力にあったルートの作成、装備の準備など、事前準備を行いましょう。また、是非お近くの山岳連盟や登山用品店が開催している地図読み講座や安全登山対策講座に参加し知識と経験を積んで、万が一の時に対応できるように備えましょう。

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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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